ウォーターマンの歴史は、1883年、ルイス・エドソン・ウォーターマンが世界で初めて毛細管現象を応用したインク機構のペン先を開発し、実用的な近代万年筆「ザ・レギュラー」を誕生させたことに始まります。
そして、1899年には「スプーン・フィールド」供給システムを開発し、これによりインク漏れを防ぐことが可能としました。
そして1900年、ウォーターマンのペンがパリ国際博覧会で金賞を受賞、さらに1904年には世界初のクリップ付きのキャップを開発し、これによりインク漏れが減ったことでペンが携帯品となりました。その後もクリップ付きのキャップやカートリッジ万年筆の基礎となる機構などを開発し、「近代万年筆の祖」としてウォーターマンは輝かしい足跡を残してきました。
革新的な技術を提供しつづけ、世界最高峰の万年筆ブランドとして長年アメリカに君臨してきたウォーターマンでしたが、戦後は、フランスのジフ・ウォーターマンがWATERMANの商標権を取得し、拠点をフランスに移しました。その後、ボールペンメーカーのビックに権利が移りましたが、再びジフ・ウォーターマンの血縁者であるフランシーヌ・ゴメスが商標権を買い戻しています。
このような長い歴史をもつウォーターマンですが、創業時からのスピリットが脈々と受け継がれており、そのデザインは130年以上が経った今でも飽きのこないものとなっています。
1970年にはインダストリアルデザイナーのアラン・カレを専属デザイナーに起用するなど、デザイン面においても革新を続けていたウォーターマンですが、近代万年筆誕生から100年後の1983年、フラッグシップモデル「ル・マン100」を発表します。
この万年筆は、素材にブラスペースを使った重厚感たっぷりのブラックボディで、男性向けの太目の円筒形のデザインです。腰のしっかりした弾力ある大型のペン先、印象的な中抜きのクリップなど、フレンチテイストたっぷりの貫録ある仕様で、のちにマスターピースとなった万年筆です。
「ル・マン100」発表と同じ年の1983年、ウォーターマンは、創業100周年を記念して「ル・マン100 サントネール」を登場させました。このル・マン100 サントネールは、それまでビッグに渡っていた商標権をジフ・ウォーターマンの血縁者であるゴメス女史が買い戻し、成功をおさめた時代の代表作となったモデルです。
スターリングシルバー製のシャンペーンという艶消し仕上げの上品でしっとりとした手触りで、18金のペン先には、100周年を称え「1883-1983」という栄光の数字が刻まれています。2000本限定で日本では丸善などから発売されました。
ル・マン100 サントネールは限定品の稀少なモデルですが、さらにレアなモデルとして、アメリカ・シアトル在住の彫銀アーティストJ.J.ライアンによって一本一本手彫りで、フローラル模様が刻まれカスタマイズされたエディションが、アメリカのディーラーによって販売されています。このル・マン100 サントネールのカスタマズモデルは、重すぎず、グリップ感もよく、手業の冴えが楽しめるトップクラスの逸品として専門家から高い評価を得ています。