杉岡華邨は日本を代表する書道家であり、現代かな書きの第一人者です。
伝統的なかな書を始め、多彩な表現でかな書の世界を広げました。
杉岡華邨は1934年に奈良の下北山村で生まれ育ちます。
習字は手本の真似ばかりで嫌いだったそうですが、就職した小学校で習字の研究授業を命ぜられたことから書を学び始めました。
最初は大御所の辻本史邑に師事し基礎を学びますが、日本独特の文字である仮名に惹かれ、1946年から仮名の巨匠であった尾上柴舟に師事し東京まで夜行列車で稽古に通ったそうです。
そこで古典を徹底的に学び、品の良い形や深く立体感のある線を極めました。
大阪学芸大学で講師として働く傍ら1950年は京都大学文学部へ聴講に通い、国文学・美学・中国文学を学び、翌年は文部省内地研究員として京都大学文学部へ留学しています。
日展は同1951年に初入選、1954年からは連続入選を重ね特選も2度受賞し、華々しく活躍しました。
杉岡華邨は書道家として成功している一方で人生への疑問と苦しみを抱え、1964年に日展の審査員となってからは審査への迷いでも苦悩したことから、約10年間 禅の思想指導を受けます。
しかし全ての煩悩を消す禅では、芸術を極めたいという気持ちまでも欲となってしまうことに気付き、その後は柳宗悦の浄土宗的思想に影響を受けました。
徹底した造形美の鍛錬に加え、深い教養による歴史や文学的背景、自己啓発による精神が花開き、流麗なかな文字の世界を生み出したのでしょう。
1978年に大阪教育大学を定年退官し、日展 文部大臣賞、1984年は日展 日本芸術院賞を受賞、そして2000年には文化勲章を受章しています。
晩年も意欲的に作品を制作し続け、生誕100年記念展を翌年に控えた2012年に亡くなりました。
まるで絵を眺めているような、温かく存在感のある作品で現在も非常に人気が高い書道家です。
1913年 奈良県吉野郡下北山村に生まれる
1934年 奈良県師範学校本科 及び 専攻科 卒業
1934年 下北山村寺垣内第一尋常小学校 勤務
1935年 習字の研究授業を命じられ、文検に向け本格的に書の勉強を始める
1940年 師範学校・中学校・高等学校習字科教員免許状取得(文検合格)
1940年 辻本史邑に師事
1946年 尾上柴舟に師事
1948年 大阪第一師範学校 勤務
1950年 大阪学芸大学(現大阪教育大学) 講師
1950年 京都大学文学部 聴講
1951年 文部省内地研究員として京都大学文学部 留学
1957年 日比野五鳳に師事
1958年 社団法人第１回日展 特選
1959年 奈良県文化賞 受賞
1961年 第四回日展 特選
1964年 第七回日展 審査員 就任
1965年 西田幾多郎 門下の哲学者 久松真一から思想的指導を受ける (約10年)
1970年 大阪教育大学教授
1972年 文部省高等学校 指導要領作成委員
1978年 大阪教育大学 定年退官
1978年 改組第十回日展 文部大臣賞
1983年 奈良県美術人協会 委員長
1983年 第十四回日展出品作『玉藻』で日本芸術院賞 受賞
1985年 社団法人日本書芸院理事長 就任
1985年 勲三等瑞宝章 受章
1989年 日本芸術院会員 就任
1990年 日展常務理事 就任
1991年 社団法人全日本書道連盟 名誉顧問
1995年 文化功労者
2000年 奈良市杉岡華邨書道美術館 開館、館長に就任
2000年 文化勲章 受章
2001年 奈良市名誉市民
2012年 3月3日逝去、享年98歳、従三位に叙される
2013年 追悼 生誕100年 杉岡華邨展
2022年 没後10年私が選ぶ杉岡華邨展
●香具山 (1958年)
第１回日展 特選
●鹿 (1961年)
第四回日展 特選
●酒徳 (1978年)
改組第十回日展 文部大臣賞
●玉藻 (1983年)
日本芸術院賞 受賞 日本芸術院 蔵
●最上川 (1998年)
画・中路融人 奈良市杉岡華邨書道美術館 蔵
●近江京感傷 (2012年)
絶筆 奈良市杉岡華邨書道美術館 蔵
