鳥取で作られる、楮と雁皮、三椏を原料にした和紙です。
別名を因幡紙(因幡紙)といいます。
奈良時代の正倉院文書の中に因幡の国で抄かれた紙と推測される紙が保存されており、「因幡の国から紙が献上された」という記録が残っていますが、因州和紙の起源はいまだに解明されていません。
江戸初期では、藩の御用紙として、また庶民の使う紙としても使用されるようになり盛んに生産が行われていました。
明治時代になると海外からの漂白技術と、鳥取県の三椏殖産奨励などによって合理的な生産方法を見出し、因州和紙の生産が飛躍的に向上します。
昭和時代に入ると洋紙の普及によって、生産量は減っていく一方でしたが、政府によって和紙の品質を認められ、第二次世界大戦で使用された風船爆弾の材料の一つ、気球原紙の生産を依頼されました。
戦後になると画仙紙や書道用紙、工芸紙、染色紙を開発し、現在では手漉きの高級画仙紙の生産量が日本一となっています。
その質の良さは「因州筆切れず」といわれ、他の紙では1枚をかいているうちに2枚書けてしまい、墨の減りも少ない事から全国の和紙愛好家や書道家に愛用されています。
また、1996年には環境庁(現・環境省)の「残したい日本の音風景百選」に因州和紙の紙漉きの風景が選ばれています。