長野県辰野町で採石される龍渓石から作られる硯で、鋒鋩が細かく良い墨が磨れるのが特徴です。
原料の石は昭和10年、当時の長野県知事・大村清一氏によって「龍渓石」と名づけられました。
始まりは江戸時代末期で、医師であり漢学者、書家でもあった渕井椿斎が硯を製作し、その品質の高さに高遠藩が目を付け、すべての硯石を所有し、甲州(現・山梨)の雨畑硯の職人達を呼び寄せ、大名などへの贈り物として作られ、民間には流出しなかった事から秘硯とされていました。
その後、領外へ「高遠硯」「伊那硯」「鍋倉硯」と呼ばれて世に出回るようになり、本格的に龍渓硯作りが始まりました。
しかし、大正時代になると硯の需要が減り、衰退するしかなかった龍渓硯でしたが、昭和に入ると地元の努力と、雨畑石が採石できなくなった山梨の硯職人たちが移住し、龍渓硯は復興し、昭和62年に長野県の伝統工芸品に指定されました。
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