唐墨(からすみ)は中国で作られた墨の事で、日本で作られた墨の事は和墨といいます。
唐墨と和墨の大きな違いは気候風土や紙の発達の違いによって、墨の製法に独特の差があります。
日本の墨作りは中国から墨の製作方法を教わった事から始まったもので、煙煤(えんばい)と膠(にかわ)が原料である事は変わりません。
ただし、膠の種類と粘度、そして煙煤の配合比率が違うため、微妙な違いが生まれました。唐墨は膠の割合が多く、墨のおりが遅いため黒味が出にくく、粘土の弱い膠が使用されているため、粘り気が弱く感じるものとなっています。
一方で和墨は煙煤の割合が多いため墨のおりが早く、黒味が強く出てますが粘度が強い膠が使用されているため、粘り気が強く感じるものとなっています。
また、唐墨は中国の気候風土に合わせて製作されているため、日本では割れてしまう唐墨が多く、古い時代の貴重な唐墨は温度や湿度が調整された場所で保管されています。
唐墨はにじみが美しく、力強さと厚みを感じ、味わい深い作品を制作する時に向いているとされています。
また、和墨と比べると墨の寿命も長く、墨の伸びが良いのも特徴です。
そのため、時間が経過した唐墨の方が厚みや味わいが増すため、古い時代に作られた唐墨の方が作りたての唐墨よりも価値が高くなります。
ちなみに食べ物であるボラなどの卵巣を塩漬けにした「からすみ」の名前の由来は、唐墨の形に似ている事から付けられたものです。