綾の手紬は宮崎県綾町で生産されている織物で、蚕の飼育から、絹の糸引き、絣括り、染色、織りまで、すべての工程を一貫して手仕事で行っています。
特に蚕は「小石丸」という小粒ながらも品質の高い品種を用いており、製糸も古い方法である「座繰り」で行っています。
綾の手紬は染織家・秋山眞和が創立した綾の手紬染織工房で生産が行われています。
秋山眞和は沖縄県で生まれており、父・秋山常磐は沖縄で琉球染織を行っていました。
幼い頃から父親の仕事する姿を見てきた秋山眞和は、戦争によって宮崎に疎開し、しばらくしてから父親の跡を継いで染織家としての道を選びます。
こうして宮崎独自の織物を目指して、沖縄の伝統的な織物である花織や絣の技法を用いた現代に通じる斬新なデザインの織物の制作を開始し、綾の手紬を生み出しました。
綾の手紬で使用されている染色に欠かせない水は環境庁からお墨付きの名水「綾川湧水郡」を、植物染料は全国有数の照葉樹林を使用しています。
綾の手紬は織物の産地でもない綾町で、何もない所からスタートした織物です。
歴史は他の織物と比べると浅いですが、使われている技法は古い時代に使われていたものばかりで、「天然灰汁発酵建て」による藍染や、秋山眞和が復活させるまで幻となっていた貝紫による染色技法の「大和貝紫染」など、手間のかかる技法により、自然の美しさを兼ね備えた織物として綾の手紬は高い評価を受けています。