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伊砂利彦

伊砂利彦(1924～2010)

京都府出身の昭和～平成時代に活躍した日本の染色家です。

陶芸家・富本憲吉の「模様より模様を作らず」に感銘を受け、松の枝葉を再構築した「松」、水の波紋がみせる一瞬の美を追求した「水」、そしてドビュッシーやムソルグスキーらの音楽から受けるイメージを造形化した「音楽」などの連作で知られています。

これらは全て形のないものですが伊砂利彦の独創的な視点と表現力によって模様として生み出されています。

実家は3代続いた友禅の糊置き業を営んでいた事から、生家は友禅の生産地域の中心地にありました。

そのため、幼い頃から職人の作業を見たり、話を聞いたりして育ち、京都市立絵画専門学校図案科を卒業すると家業である染色に従事するようになります。

戦後の失業者救済事業として、友禅染を元来の分業ではなく一貫作業で行う工房の経営を任されたため、複雑な染色工程や技術を学ぶ機会を得ました。

こうして仕事は軌道にのり、生活も安定してくると自らの作品制作を行うようになります。

富本憲吉の新匠会に入り、活躍を見せていた伊砂利彦は、はじめはろうけつ染の作品を制作していましたが、同じ新匠会で活躍していた稲垣稔次郎の影響を受けて型絵染へと表現が変化していき、受賞を重ねていきます。

その後、フランスのパリやシャルトルなどで個展を開催し、フランス政府より芸術文化勲章シュヴァリエ章を受賞するなど日本のみならず世界でも活躍を見せていきます。

また、新匠工芸会に出品した型絵屏風『沖縄戦で逝きし人々にささげる鎮魂歌』や『海に逝きし人々に捧げる鎮魂歌』は高い評価を受けており、染色家でありながらもアーティストのような作品を展開していきました。

伊砂利彦年表

1924年　京都府で生まれる

1941年　京都市立美術工芸学校彫刻科を卒業する

1944年　海軍二期予備生徒として滋賀海軍航空隊に入隊する

1945年　復員し、京都市立絵画専門学校図案化を卒業する

1953年　第8回新匠会展で入選する

1954年　工房を開設する

1958年　新匠会会友となる

1959年　新匠会会員となる

1963年　個展を開催する

1971年　第26回新匠会展で富本賞を受賞する

1975年　新匠会が新匠工芸会と改称され、会務責任者となる

1985年　第40回新匠工芸会展で記念大賞を受賞する

1987年　『伊砂利彦作品集』が出版される

1988年　京都医芸術文化協会賞を受賞する

1989年　京都府文化賞功労賞を受賞する

京都美術文化賞を受賞する

1990年　フランス政府より芸術文化勲章を受章する

1992年　第47回新匠工芸会展で富本賞を受賞する

京都市文化功労賞を受賞する

1999年　フランスのパリとシャルトルで個展を開催する

2003年　フランスのシャルトルとサンテテンヌで個展を開催する

2004年　京都市美術館別館で展覧会が開催される

2005年　東京国立近代美術館工芸館で個展を開催する

2008年　福島県立美術館で志村ふくみと二人展を開催する

2009年　第64回新匠工芸会展で審査員特別賞を受賞する

2010年　日本文化藝術財団より第一回創造する伝統賞を受賞する

逝去