阿波正藍しじら織は徳島県徳島市で生産されている綿織物です。
経済産業大臣指定伝統的工芸品に認定されており、徳島県指定無形文化財にも認定されていますが、「阿波しじら織」として認定されています。
阿波の旧藩主・蜂須賀の時代では、一般庶民階級である庶民が絹布を用いる事が固く禁じられており、庶民たちは工夫をこらし、木綿織物で外見の美を生み出していきました。
そこで誕生したのが「たたえ織」という木綿織物で、「たたえ」とはこの地方の方言で「経糸を引いてそろえる事」を意味しており、後にこれが阿波正藍しじら織へと生まれ変わります。
ある日、阿波国名東郡安宅村(現・徳島市安宅)に住む海部ハナという人物が「たたえ織」を改良した織物を織り、それを雨に濡らしてしまいました。
乾かすために天日干しを行ったところ、おもしろい凹凸ができた事をヒントに、呉服商の阿部重兵衛と共同で改良を重ね、「しじら織」を完成させます。
その後、阿波藍という天然の植物から作られる藍で染め上げる事によって、藍の濃淡をいかして様々な藍色を生み出し、「阿波正藍しじら織」が作られるようになりました。
阿波正藍しじら織はシボと呼ばれる凹凸がある事が特徴で、この凹凸によって生地が肌につく面積が小さくなるため、汗をかいても張り付きにくく、清涼感のある着心地に人気が集まっています。
また、木綿で作られているため吸湿性も高く、夏の衣料に最適とされています。
現在では着物はもちろん、ネクタイやシャツなども作られており、現代生活に合った製品作りが行われています。