越後上布は新潟県南魚沼市、小千谷市を中心に生産されている平織の麻織物です。
吸水性・通気性に優れた夏の着尺地として知られ、その特徴は軽さと透けるような薄さで、これらは糸の細さによって生み出されています。
越後上布の原料は苧麻という上質な麻の皮を剥ぎ、繊維だけにして乾燥させたものをさらに爪で裂き、撚り繋いで糸を作りますが、この作業は決して簡単なものではなく、一反分の糸を績むのに1ヶ月以上の時間を必要としています。
更に苧麻でできた細い糸を使って手織で制作するため、越後上布を織る作業だけでも3ヶ月以上かかり、最後の仕上げに雪晒しを行う事によって白地はより白く、色地は落ち着きを持ちます。
越後上布の上布とは江戸時代幕府への上納品として用いられたことからそう呼ばれるようになり、上等な麻織物を指す言葉として使われていました。
しかし、越後上布の歴史はとても古く、731年に朝廷へ献上された物は現在も奈良東大寺正倉院に保存されています。
その後、献上品として度々歴史の中に登場し、贈った事が記録に残されている越後上布ですが、室町時代では幕府の公服である素襖の材料として必需品となり、この頃から権力者への贈り物として欠かせない物となりました。
現在、越後上布の生産に関して原料である苧麻の生産量が少なくなっている事、後継者不足による職人の高齢化などによって年々生産量が減少しており、近い将来越後上布は「幻の布」となってしまう事が心配されています。
そのため、国の重要無形文化財の指定やユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、越後上布の保護活動も行われています。
そのため昔は紺地に縞模様が定番でしたが、現在は淡色や爽やかな色合いの物も作られるようになり、柄も古典柄の組み合わせから新しいものまで様々な越後上布が作られてます。