琵琶湖の東側にある高温高湿な近江は麻織物の生産に最適な環境で
室町時代から良質な麻の生産地であった。
板の上で手揉みをする独自の仕上げ法によって出される「皺(シワ)」は
肌触りが格段によくなり、近江上布の特徴となった。
細い糸で織りなす繊細で上品な麻布は
「別名・高宮細美」とも呼ばれ、献上品としてさかんに利用された。
豊臣秀吉が朝鮮出兵を始めた頃にも
陣中見舞いとして高宮布の帷子が献上されたといい、
送り主の多賀大社には秀吉からの礼状が今でも残っている。
江戸時代には彦根藩の保護奨励のもとでさらに発展する。
さらに近江商人が全国に売り歩きながら
各地の情報や原料を持ち帰ったことで、ますます技術を高めていった。