沖縄県の久米島で伝承される織物。
図案作成から糸紡ぎ・染料植物の採取・染め・織り・仕上げまでの
全行程を一人の人間が一貫して行っている。
全て一人で担う手仕事だからこそ、その心と技術が色柄に表れ、
味わいの深さの源となっている。
島で採取される植物から取った染料を泥によって染め上げ、
基本五色(黄・鶯・鼠・赤茶・焦茶)と織の技によって表現される
文様の美しさが久米島紬の魅力のひとつ。
文様だけでも鳥・花形・亀甲など基本だけでも約80種類もある。
いずれも王朝時代に生まれた伝統的な文様。
久米島紬の背景には薩摩の琉球入りによって
年貢布織を強制された島民の苦難があった。
御絵図によって定められた色柄の、
少しの乱れやキズも許されない厳しい環境での
島民の苦労や努力が現在の久米島紬の技術の向上へつながった。
こうして精巧さを極めた製品は薩摩を経て江戸へ。
そこでは「琉球絣」と呼ばれ、珍重されると共に
久留米絣、結城紬などへも多大な影響を与えたという。
そのため久米島は「日本の紬織の故郷」とも呼ばれている。