埼玉県出身の紬作家です。
紬とは紬糸で織られた絹織物の事で、その絹糸は生糸を引き出せない品質のくず繭を潰して真綿にし、その真綿から糸を紡ぎだしたもので、耐久性に優れています。
田島拓雄はその紬糸を使って地機と呼ばれる縦糸を自分の腰に結び付けて織り上げる技法を使っており、この技法は縦糸の張力が一定に安定しない事、身体的に負担が大きい事などが原因で、かつては日本中の農家で見られたものでしたが、現在では廃れてしまった技法でもあります。
田島拓雄はこのように手間のかかる紬糸と地機を使って自然の色の暖かさを感じる事のできる草木染めの紬の制作を行っており、特に白の紬には高い評価を受けています。
そんな田島拓雄が紬作家としての道を進む事になったのは、父親の存在でした。
父親である田島隆夫もまた紬作家として活躍しており、田島拓雄も武蔵野美術大学を卒業してから10年間父親に学びました。
初期の頃の作品はグレーやベージュといった薄い色や、黒地の縦縞模様などが多く見られましたが、最近では「新しい挑戦」として煉瓦色や渋さを感じる金色かかったオレンジなど主張の強い色の紬の制作にも励んでいます。
女優の樋口可南子も絶賛し、愛用するなど多くのファンがいる田島拓雄の作品は、袖を通す際は紬独特の硬さがありますが、長年着ていくうちに味が出て、型崩れもほとんど見られないと、着物ファンの間では高い人気を誇っています。