沖縄県八重山諸島で伝承されている織物。
八重山には日本でここにしかない植物が自生していて、
八重山上布の染料となる「紅露(ウール)」もそのひとつ。
他の染料とは違い、煮出す手間がいらず
すりおろした絞汁がそのまま染料になる便利な染料。
糸に染料を摺り付けるだけで染めることもできる。
織りあがったものは一ヵ月ほど日光に晒す。
普通の織物は日光にさらしてしまうと色が褪せてしまうが、
紅露は南国の強い日光にあたることによって発色し、
しっかりとした染めになる。
その後、八重山上布だけの技法である「海晒し」を行う。
海晒しとはサンゴ礁の海の中に晒して不純物を洗い流す。
海水には白をいっそう白くする効果と、紺色を定着させる効果があるという。
時代の流れの中で伝統の灯が消えかけたこともあったが、
心ある人々の努力と苦労によって本来の伝統技術がよみがえった。