前田昭博
鳥取県で生まれ育った前田昭博は、父親が教員だった関係で工作が好きでした。
インテリアデザイナーなどの美術の仕事に興味を持ち、大阪芸術大学に進みます。
そこで白磁に出会い、その魅力に取り憑かれました。
卒業後は鳥取の実家に戻り窯を開きますが、白磁の相談相手がいないことから最悪の環境であると感じます。
しかし失敗を重ね、次第に土と会話できる感覚を身に着け、かえって何もない状況が創作に打ち込める最適の環境であることに気付きました。
また山陰のどこか温もりのある雪や柔らかい光などの風土が、感性を助け作品に反映されることとなります。
卒業の2年後には日本陶芸展に入選し、様々な入賞や活躍を経て2013年59歳で人間国宝に認定されました。
入選や展覧会への出品は日本のみならず、スイス、フランス、イタリア、アメリカ、マレーシア、インドネシア、イギリス、オランダ、シンガポールと幅広く世界中から支持を受けています。
前田昭博は現在も郷里の鳥取で制作に励んでおり、後続の育成にも力を入れています。
作風
前田昭博は師匠を持たずに自分で極めた陶芸家です。
素材が本来持っている性質を熟知した上で、その美しさを引き出すことを大切にしています。
製作時に重要な工程である『面取り』は、ろくろによる形成後の指の跡や角部を取り除く造形作業であり、前田昭博は内側に押し込むように削るそうです。
この時、素材との対話で焼成時にヒビが入らないぎりぎりの力で攻め、美しいフォルムが形成されます。
釉薬は様々な調合で試行錯誤の末に、生地が透けて見えるしっとりした肌を生み出しました。
自然光とマットな肌に落ちる陰影のコントラストが、凛とした美しさを漂わせています。
また照らされる光の季節や時間によって、山陰の優しい自然の移り変わりのように表情を変え、豊かな気持ちにさせてくれます。
前田昭博の作品は人気が高く、過去の作品も中古市場で高い需要です。
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