輪島塗は高級漆器として、現代においても、
幅広く販売されており、その歴史は古く、
現代のような輪島塗の技術が確立したのは、
凡そ江戸時代前期の寛文年間と伝えられています。
その輪島塗の漆器を鮮やかに加飾する "蒔絵" や "沈金"
という技法。
沈金(ちんきん)は、漆芸の装飾技法のひとつで、
漆の塗面に刃物で文様を彫り、
この痕に漆を摺り込んだあと、金箔や金粉等をくぼみに埋めます。
輪島塗や会津塗などで、よく使われている技法です。
この沈金象嵌が評価され、
山岸一男は、2018年に重要無形文化財『沈金』保持者
(人間国宝)に認定されました。
山岸一男は、
沈金師・福光文次郎に師事し、伝統的な沈金技法を学ぶ
とともに、石川県立輪島漆芸技術研修所沈金科で、
前得二や、松田権六等から沈金をはじめとする漆芸技法
について指導を受けたのち、技法表現に独自の創意工夫
と研究を重ね、その技を高度に体得します。
繊細な制作工程として、作品には様々な工夫が施されて
おり、沈金の一種で、彫溝に漆を摺り込み黒く仕上げる
沈黒や、彫溝に色漆等を埋めて研ぐ、
沈金の応用として発展した『沈金象嵌』は、
複雑且つ繊細な質感の色彩表現を見出しており、
これらの技法を効果的に織り交ぜることによって、
作風を確立し、大胆に抽象化して表す作品達は、
現代感覚溢れるものとして高く評価されています。