鳥取県出身の木工芸家で、重要無形文化財「木工芸」の保持者です。
木工芸の重要無形文化財において6番目の認定者です。
また、大学を卒業してから美術学校の教師をつとめ、34歳で木工芸の道に入ったという重要無形文化財の認定では異例の経歴を持っています。
大坂弘道は大学を卒業してから美術教師をつとめる傍ら、木工芸品の制作を独学で行っていました。
その後、本橋玉斎、氷見晃堂、竹内碧外に師事し、本格的に木工芸を学びます。
唐木指物などの木工画法を得意とし、華麗な装飾が特徴で、木工画法は複雑な文様の木画にさらに象牙や水晶、金、銀などの材料を象嵌していく技法ですので高度な技術力を必要としています。
そんな高い技術力が抜擢され、宮内庁から正倉院宝物「紫檀木画箱」の複製の依頼を受けます。
しかし、この複製の作業はそう簡単に終わるものではありませんでした。
構造に7年かかり、最初の5年間は「紫檀木画箱」を再現するのに必要な木材、金属、膠などの調査に費やしました。
こうして本格的に取り組むようになると美術教師を退職し、複製作業に専念しました。
細密な幾何文が美しい「紫檀木画箱」は、幅1cmの文様を描くのに複数の素材からなる細片を30枚も重ねる必要がありました。
そのためには古代の木工職人の技術を蘇らせなくてはならないのですが、大坂弘道は見事にそれを成し遂げました。
この技術を応用して黒柿に蘇芳染を施した美しい地肌に生える繊細な文様は大坂作品の大きな魅力となっています。
また、微細な美にこだわるため作品は年に2点ほどしか制作できないそうです。