センチメンタルジュエリー
センチメンタルというのは「感傷的な、切ない」という意味をもつ語です。
ヴィクトリア期(1837年~1901年、画像はヴィクトリア女王)のイギリスの人々はとりわけ恋愛関係における「絆」を強め「わたし」と「あなた」の二者間の関係性を重視して交際や夫婦の円満を持続させるための重要な手段として例えば結婚指輪や婚約指輪、贈り物のジュエリーには深いメッセージを込めました。
当時の女性にとっては、こうしたジュエリーを受け取れるということが相手からの愛情を確信する契機の一つでした。当時の女性の「ふるまい方」においては、「ロマン主義」の抒情的な文学(階級を超えた恋愛や神話の中の悲劇、恋人との別れや恋愛における試練が中心的に描かれました)美術、音楽、歌劇の物語に登場する人物イメージの影響から、これ見よがしなほど大胆な感情表現やストレートな言葉による愛情の表現を示す快活さと意志の堅さ、交際相手への忠誠を示すというある種の「建前」をわきまえて相手との恋愛関係を自身が持っているというプライドを表現することが素晴らしいという特徴の風俗と、控えめに柔らかい物腰をもち、慎み清純に、繊細にという風紀との相反する振舞いを巧みにとっていくことが流行する結果となりました。ヴィクトリア時代の形式ばった、窮屈さも感じられる気風の中にあったセンチメンタルジュエリーは、人々がことばでは言いにくい意志や信条を身に着けるもので表して伝えるという機能も果たしていました。
このような需要から「誰からも文句が出ないロマンティックなデザインであること」がジュエリーの作り手に頻繁に注文として求められていました。 また、照明器具が発達していなかった古い世紀のジュエリーは「宝石は輝きではなく色を楽しむもの」とされたため、宝石の台座は宝石の背に対して閉じられたクローズドセッティングという形が主流で、台座に宝石と同じ色の箔を仕込んで色を強調する事がよく行われました。そのため、非常に宝石自体の見極めに慎重な判断が必要で、コレクターかイギリスのヴィクトリア様式を好きな方々であるからこそ持ち味を理解できるという難しさもあります。いわの美術ではこうしたセンチメンタルジュエリーやモーニングジュエリーを求める次のコレクター・ユーザーへの橋渡しをすべく努めてまいります。査定は無料で行っております。「型の古いジュエリーだから」と捨ててしまうことなく、ぜひ無料オンライン査定をご利用下さいませ。
センチメンタルジュエリー 言葉遊び
センチメンタルジュエリー(sentimental jewelry)
19世紀のイギリスでヴィクトリア期と呼ばれた1837年から1901年の期間の間に作られ流行したジュエリーです。主なモチーフには以下のような種類があり現在のお手軽な量産品のアクセサリーのデザインにもモチーフは引き継がれています。モチーフの種類には以下のようなものがありました
- ・女性の手(例:二本の手が支えるハート、花束をもつ手など)
- ・忘れな草(「私を忘れないで」という意味)
- ・鳩や燕
- ・翼を持った天使の像
- ・リボン
- ・三日月と星
- ・十字架
- ・恋愛にまつわる花言葉をもつ花のモチーフ
宝石の言葉遊びの例
宝石を名前の頭文字の順で並べて愛情を伝えるための単語になるように配列しています。
・Regard:「好意・敬意・愛情」という意味がこもっています。
- Ruby :ルビー
- Emerald:エメラルド
- Garnet:ガーネット
- Amethyst:アメシスト
- Ruby:ルビー
- Diamond:ダイアモンド
・Dearest :最愛の人
- Diamond : ダイアモンド
- Emerald : エメラルド
- Amethyst : アメシスト
- Ruby : ルビー
- Emerald : エメラルド
- Sapphire :サファイア
- Topaz : トパーズ
・Love:愛
- Lapis Lazuli:ラピスラズリ
- Opal:オパール
- V:ヴァーメイユ(「ガーネット」の古語が当てられました)
- Emerald:エメラルド
貴石に込められた意味:ダイアモンド、ルビー、サファイア、エメラルドには下記のような意味が込められました。
- ルビー:情熱
- エメラルド:希望
- サファイア:喜び
- ダイアモンド:持続
「あなたの愛は私の喜び」「友情を贈る」という銘句や好きな人の名前やイニシャル(モノグラム)といった明快な言葉やフレーズ、もしくは開ける所が分からないような隠しロケット、ハートマークがついた名前などのような隠語的な言葉やフレーズで装飾された指輪やロケットのアクセサリーも作られました。
忠実、貞節を意味するモチーフ
- 置かれた場所でしたたかに生えるアイビー(植物の一種)
- 火床をつかさどる神のウェスタ神に仕えるウェスタの巫女たちの祭壇の下で横になる「犬」があります。
ウェスタ神とウェスタの巫女たち
ウェスタ神はローマ時代の信仰の中にあった「火床」を象徴する神で「結婚」「家庭」「子育て」をつかさどる神でした。この神は唯一の偶像崇拝されなかった神であったと言われています。 その神に仕える聖職者団と巫女として仕えた女性たちは、とても享楽的なローマ帝国の社会の中で国教を学び、社会に奉仕し、社会を正すために国民に対して国教の教えを指導するという三段階の職務を担い、ローマ時代当時に国民に課されていた結婚・家庭を築くこと・子供を作る責務は免除されたものの、彼女たちは消してはならない火床の「火」になぞらえられていたため思春期になる前の若いうちから修行を積み、30年という長い期間の禁欲を課されていました。その後に結婚を望むものは結婚を許されるものの、厳しい修行や、生涯の一番若く楽しい時期である30年もの間の禁欲に耐えることが難しく、ウェスタの巫女の名誉を捨てて一般国民の社会に戻る女性も居たといわれています。
「ウェスタの巫女」だった者と結婚ができることはローマ時代の男性にとって名誉なこととされていました。オペラ演目にも「ヴェスタの巫女」という演目があり多くの歴史的に古い時代のオペラ演目を復元し再演させたマリア・カラスがスカラ座で歌っていた頃のアリアの録音は現在も聞くことができます。ヴィクトリア期のロマン主義の文化ではこうした神話が見直されていたためにセンチメンタルジュエリーのモチーフにも神話のシンボルが反映されました。