パリ万博とアールデコ【買取・新着情報】

パリ万博とアールデコ
2016.2.1

パリ万博とアールデコ

1925年のパリ万国博覧会「アールデコ博覧会」と略され、西洋アンティークの分類における「アールデコ」(Art deco)の由来となっています。1800年代から1900年代の初頭にかけて数多く行われたパリ万博の中でも、特に現在の西洋アンティークと骨董品の世界の成立に対して重要な働きをもたらした1925年のパリ万博と1920年代の風俗について学んでいきましょう。


1925年のパリ万博の正式な名称は、現代産業装飾芸術国際博覧会(仏語:Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels Modernes)といいます。

何やら長い名称ですが意味は文字のまま、世界各国の企業や職人の団体が出展し、当時最新の装飾芸術や最新のテクノロジーを発表した博覧会でした。1915年に開催予定だった装飾芸術が主題のパリ万博は、第一次世界大戦の影響から延期となり、1925年に開かれたものでした。

パリ万博の背景とモダンデザインの潮流

1925年のパリで行われた現代産業装飾芸術国際博覧会は「国際」とはいいつつも1925年パリ万博の世界各国の出展は全体の三分の一、フランス国内・パリからの出展が三分の二という状況にあり、1925年パリ万博の主軸は開催国であるフランス文化の威信を国際社会に伝えようという点に有ったと考えられます。

なぜなら、

  1. イギリスのウィリアム・モリスジョン・ラスキンが1800年代終盤に主導したアーツ&クラフツ運動

  2. ドイツ工作連盟(例:「バウハウス」という学校を創設したグロピウスブルーノ・タウトらが主導)

  3. ウィーン工房(例:グスタフ・クリムト

  4. ロシア構成主義(例:アレクサンドル・ロトチェンコ、ステパーノワ

といった数々のデザイン運動の勃興によって新しい工業製品のデザインが創造された時期であり、フランスはモダン(現代的)な工業デザインをいち早く打ち出す必要に迫られていました。当時のフランス政府はフランスの輸出産業伸び悩みからの回復を掛け、フランスの工業デザインの先進性・現代性を強くアピールし、経済を活性化させようと試みたのです。


アメリカ アールデコ

一方でアメリカは、1925年のパリ万博へは殆ど出展をせず沢山の視察団の派遣を強化することで、フランスをはじめとするヨーロッパの文化を吸収することに力を入れます。当時のアメリカからのアールデコのアイコンとしてはジャズ歌手のジョセフィン・ベーカーが居ました。ジョセフィン・ベーカーは「クレオール」(フランス領国出身のフランス語話者)にルーツをもったアメリカの黒人音楽である「ジャズ」がヨーロッパで大流行する火付け役となり、その後のアメリカのジャズミュージシャンのヨーロッパ渡行において先駆けた存在となります。

アメリカを代表する建築物である

  • エンパイア・ステート・ビルディング

  • クライスラー・ビル

  • ロックフェラー・センター

以上の建物はまさしくアールデコ様式の建築物であり、直線と曲線の鉄骨の形を活かしたビルディングや、コンクリートをカバーするタイルの装飾などが特徴的です。

フランスの自動車製造業の老舗であるシトロエン社はエッフェル塔に当時の史上最大級のライティングを提供し、効果的な広告を行いました。1925年のパリ万博の参加企業は、いわの美術が買取を行っているブランドでおなじみのガレラリック、ドームをはじめ、銀器でおなじみのピュイフォルカ、陶磁器ではセーブル王立製陶所、アールデコ彫刻を代表するチパルス、北欧からは上質な照明器具を開発したルイス・ポールセン、ポール・ヘニングセンのランプなどが一同に軒を連ねたという豪華さです。


1920年代 アールデコの風俗

アールデコの1920年代、アメリカは著しい経済発展を遂げ、大量生産・大量消費がいよいよ世界のスタンダードとなります。テレビジョンの開発から情報メディアは世界的な広がりを見せ、メディアに対する「大衆」(Mass:マス)という存在が確立した時期でした。世界の人々はまだ資本主義に対する期待や将来への希望を持っていました。

ファッションではココ・シャネルが登場し、働く女性を輝かせるジャージ素材のスーツや人造宝石の宝飾品、有名な香水No.9などを次々に発表しました。

アールデコ期は、赤・黒に控えめな金・銀の色使いにくわえ、艶のある質感が持ち味のエナメル、ガラス、人造のパールや宝石がジュエリーに採り入れられます。

映画女優においては、妖艶さと芯の強そうな表情がもてはやされ、マレーネ・ディートリッヒ、グロリア・スワンソンらはトーキー映画で名演を残します。女性の社会進出と同時にアメリカのたばこ産業は女性を的に広告を行い、頻繁にハリウッドスターが紙巻きたばこやキセルをくわえるイメージを発信しました。タマラ・ド・レンピッカは自動車を運転する女性像などを描き、これまでになかった都市生活の中で自立した女性の像を提示しました。

東西の美を折衷されたジュエリーや香水瓶に伴い、宝飾品と同然のクオリティーをもつシガレットケースも、盛んに作られました。その多くは富裕層の顧客に向けた一点物、オーダーメイドの品物として紹介されました。このように工業製品であってもこだわりぬかれた一点、唯一無二の品を求めた人々がかつていたために、現在の西洋アンティークと骨董品の世界が出来上がっていると考えることも一つの考え方として可能でしょう。元々ジュエリー作家であったラリックはこの時点では香水瓶を世に送り、すでにガラス工芸作家として不動の地位を得ていました。

スッキリした幾何学的な線とパターンを取り入れた都会的な意匠や、映画や「レヴュー」と呼ばれるショービジネスの文化を反映した彫刻や絵画における官能的な人体の表現、体の線をはっきりと見せる衣服に合わせ、妖艶な細い眉と赤いルージュのメイクが流行したアールデコスタイルは、スコット・フィッツジェラルドの小説が原作である「華麗なるギャッツビー」の映画をご覧になると、衣服から建物、庭園の造り方まですべてアールデコ様式で統一された世界を映像でご堪能いただくことができるでしょう。


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