外国の勲章~イギリス
勲章制度の始まり
国家や公共に対する功績や業績をたたえるために、国が個人や団体に対して与えるもののことを「栄典」といいますが、その代表的なものが「勲章」です。
日本において勲章は、天皇の名で授与されます。現在の日本の勲章の制度は、昭和22年に日本国憲法によって定められたものですが、元来、勲章は西ヨーロッパに発祥した制度です。
勲章は、12世紀、十字軍の遠征に際して、聖地エルサレムで編成された宗教騎士団の所属(order)を示す標章をマントに付けるようになったことに由来します。
十字軍時代の騎士団は異教徒と戦うための宗教的なものでしたが、13、14世紀になると世俗的騎士団が、君主によって設立されるようになり、この世俗的騎士団に加入が認められるということは君主による恩恵であり、名誉である意味合いが込められるようになりました。
君主は、自分を支える有力貴族で騎士団を構成し、名誉と特権を与え、騎士団員であることは支配階級の一員であることを意味するようになりました。
騎士団員であることは、支配階級であることを示し、その騎士団勲章は栄誉の証しとなっていきました。
当時、騎士団勲章が与えられる対象は主に王侯貴族でしたが、その後、国家が拡大すると、栄典を与える対象が軍人、政治家、役人、経済人、文化人へと広がり、それら対象者のために等級が増やされました。
イギリス(連合王国)の勲章制度
イギリスの勲章制度は1348年、エドワード3世がガーター勲章を創設したのが最初です。
ガーター勲章は、勲功のあった者を名誉としてガーター騎士団に加えることを意味しました。このため、勲章の階級表示には騎士の階級名が反映されています。
イギリスでは民主政体の枠組みの中で、君主制、貴族階級、勲爵士、騎士団を歴史の所産として保持してきましたが、1993年のメージャー首相の時代に、一定の地位にある者に自動的に栄誉を与えるという慣行をやめ、功績に基づき、多くの人々を栄典の対象とするように栄典制度の改正が行われました。
イギリス国民に対する叙勲は、年2回、1月1日と、6月の女王の誕生日に発表されます。
現行のイギリスの栄典には以下のようなものがあります。
【一代貴族】一代限りの貴族の爵位で、女王により定期的に制定される。
【准男爵の爵位】世襲可能で、男性相続人に相続される。
【ナイトの爵位】特定の騎士団に属さない下級騎士と騎士団に属する騎士に別れる。ナイト爵の叙勲は中世の騎士道の慣例に由来し、授与式は昔の慣例に従って行われる。
ナイト爵に含まれる勲章は次のとおりです。
【最高ガーター勲章】1348年、エドワード3世によって創設され、単一級で、対象となるのは英国王室、外国君主、貴族、公職の高官を務めた者。日本では明治天皇以降歴代天皇が受章ている。
【最古最高貴シッスル勲章】イギリス連合国においては、ガーター勲章に次ぐ勲章。15世紀に制定され、1703年に再制定された単一級。定員21人。ガーター勲章がイングランド人以外の連合王国民や外国元首にも贈られるのに対し、スコットランド人の血を引く者以外が授与されることはほとんどない。
【最高名誉バス勲章】1725年、ジョージ1世が創設。3等級で、国王に対して優れた功績をあげた者に授与される。外国人に対しては、共和国の大統領等政府首脳級の政治家に最上級勲章が贈られる。日本人では伊藤博文が最初に受章した。
【功績勲章(メリット勲章)】1902年、エドワード7世が創設。単一級で定数は最高24人。軍功あるいは芸術、文化、科学の向上に功績のあった者に授与される。この勲章は功績が基準とされている。そのため、王族の受章者は他と比べて少ない。日本人では山縣有朋、大山巌、東郷平八郎が受章している。
【最優秀聖ミカエル・聖ジョージ勲章】1818年創設。3等級で、自国とイギリスに駐在する他国の外交官・イギリス連邦諸国の行政官が主な対象。日本人では松方正義が最初に受章している。 王室ヴィクトリア勲章 1865年にヴィクトリア女王が創設。5等級で、対象は王室職員・君主の公式記録係など王室に対して功績があった者。
【ロイヤル(王室)ヴィクトリア頸飾】1902年、エドワード7世が創設。単一級で、対象者は王室のメンバーと外国の君主。別格な勲章であるため、最高勲章であるはずのガーター勲章を受章した後に授与される場合もある。日本でも高松宮宣仁親王と秩父宮雍仁親王が皇弟の身分で授与されている。
【大英帝国勲章】1917年ジョージ5世が創設。5等級で授与数には制限があり、各等級で軍人と文人別に毎年の最高定数が定められる。対象は公職その他の分野で優れた功績をン越した者、国家に貢献した者で、外国人も含め、最も一般的に送られる勲章。
その他:コンパニオンズ・オブ・オーナー勲章 、ディスティンギッシュト・サービス・メダルが殊勲勲章など。