横浜トリエンナーレに行ってきました!【買取・新着情報】

横浜トリエンナーレに行ってきました!
2017.10.3


神奈川県横浜市で3年に1度行われる現代アートの国際展

「ヨコハマトリエンナーレ2017」へ行ってきましたのでレポートしたいと思います!

今回ヨコハマトリエンナーレに行ってみての印象としては、

難解なイメージのある現代アートですが気軽に楽しめる作品が多かったように思います。

 現代アート楽しめるかな…と不安になっている方にもおすすめできる内容でした。


そしてこのヨコハマトリエンナーレ会場が3か所あるのですが

見応えのある作品が多く、じっくり見ていたら時間が無くなってしまった為 

私は横浜美術館内しか周れず…

そのためご紹介するのは横浜美術館内の作品のみとなります。

それでは、まずはヨコハマトリエンナーレについて簡単にご説明致します! 

 


     ヨ コ ハ マ ト リ エ ン ナ ー レ と は     

 

2001年から数えて今回で6回目を迎えたヨコハマトリエンナーレ

2017年のトリエンナーレでは、

「島と星座とガラパゴス」というタイトルのもと「接続性と孤立」をテーマ

国内外から38組のアーティスト

横浜美術館・横浜赤レンガ倉庫1号館・横浜市開港記念会館横浜

以上3会場をメイン会場として作品を展示しています。

 

アーティストの数を絞り、各アーティストが複数の作品を展示することで

個展が点在するような構成になっているのが特徴です。

星座や多島海のように展示された作品群を観覧者の想像力や独自性によって

点と点を結ぶように一つの展示からまた別の問題へと繋がっていきます。

 

 

  ヨコトリをより楽しむために  

 

( 1 )  音声ガイド機能のついた専用アプリをインストール !


今回のトリエンナーレでは公式アプリが配信されています。

作品の解説は「ヨコハマトリエンナーレ2017 音声ガイドアプリ」から無料で聞くことができますので、こちらも事前にご用意されることをオススメします!

インストールし、事前に予備知識を入れ当日楽しむためにはもちろん当日の活用方法としてスマートフォンのBluetooth機能をONに設定してアプリを起動してみてください。

なんと、作品の前に立つと自動で作品の解説ページへ飛んでくれます!なかなかの便利機能なのでぜひご活用ください。

 

( 2 )  公開対話 「ヨコハマラウンド」 で 深堀 !


 

今回横浜トリエンナーレを鑑賞した個人的な感想として

各作品の共通点を見つけ出し、星座のように繋げるという作業が難しく感じました。


そんなモヤッとした気持ちを払拭してくれるのがこの「ヨコハマラウンド」です!

会期中複数回行われ毎回アーティストやゲストを招いて行われる公開対話で、

各回のテーマに基づいて様々な問題の深堀が行われていますので

より深く理解したい方にオススメです。

 

実際にこの公開対話を見に行けない!という方も

横浜美術館内にアーカイブがありますのでご安心ください

 

 ( 3 )  カメラ ・ 携帯電話 の 充電は 満タン に ! 


ヨコハマトリエンナーレではすべての作品の写真撮影が許可されています。

スマートフォンやカメラの用意をして気になる作品は写真に収めちゃいましょう!

後日他の作品との出会いで見返したくなる時がくるかもしれません。

(フラッシュ撮影や動画撮影は禁止されています。)


さて、次からは私が気になった10人のアーティスト10名をご紹介していきます。



     気 に な る 10人の 作 品 ご紹介      

 

  • アイ・ウェイウェイ
  • ジョコ・アヴィアント
  • 川久保ジョイ
  • 畠山直哉
  • 瀬尾夏美
  • 風間サチコ

  • ブルームバーグ&チャナリン

  • マーク・フスティアーニ

  • パオラ・ピヴィ

  • オラファー・エリアンソン

 



  アイ・ウェイウェイ  


 

アイ・ウェイウェイ(艾未未)《安全な通行》 横浜美術館外観

 

横浜美術館の外観には、北京オリンピック(2008年)のメイン会場「鳥の巣」をデザインしたことで有名なアイ・ウェイウェイ(艾未未)《安全な通行》が展示されています。

 

救命ボートが外壁に取り付けられ、トルコからギリシャのレスボス島にたどり着いた難民が実際に着用されていた救命胴衣約800着に柱が覆われています。

柱に近づいてみると圧巻。救命胴衣の土汚れや破れなどの損傷が確認でき、命がけで海を渡った難民の厳しい現実と一人一人の一瞬が感じられます。

 



  ジョコ・アヴィアント  



ジョコ・アヴィアント《善と悪の境界はひどく縮れている》

 

インドネシアのアーティスト ジョコ・アヴィアントによる竹2,000本を編み上げた作品。 

神域と現世を隔てる結界の役割を持つ日本の注連縄(しめなわ)から着想を得て制作されたようです。

入館してはじめに出迎えてくれるこの作品、横浜美術館内ゲートのような役割を担っており、作品の下をくぐって次の作品へと向かうことになります。正面から見ると竹のようには見えませんが、横からみると竹の断面が見えます。竹がこんなにも大きくねじれるものなのかと驚き…。

母国・インドネシアでは伝統的に日用品に用いられていた竹は近代化が進むと共に失われつつあります。そんな伝統文化や自然との共生がテーマの作品です。



  川 久保 ジョ イ  


 

手前:《テラ・アウストラリスのためのスライス》 奥:《アトラスの壁》


元金融トレーダーという異色の経歴を持つアーティストの川久保ジョイは、エネルギー問題、経済、環境などの問題を作品の中でしばしば取り扱うことでも知られています。


三日月型のオブジェ《テラ・アウストラリスのためのスライス》には地図が描かれています。「テラ・アウストラリス」とは「メダラニカ」の別称で、南極を中心として南半球の大部分を占めると推測された伝説上の大陸のことだそうです。

そして、テラ・アウストラリスはのちにオーストラリア大陸を指す言葉となったそうです。


よく見てみると「不思議の国のアリス」の作者「Lewis Carroll」や、幻想的な短編作品で知られる「Jorge Luis Borges」など鏡や迷宮をモチーフにした作品を手掛ける作家の名前などが書かれています。

写真には写っていませんが「Fukushima」や「Hiroshima」などの日本の地名も書かれており、それぞれが何を示しどこに繋がっているのかを考えながら鑑賞してみてください。


 

《テラ・アウストラリスのためのスライス》拡大するとこんな感じ。


奥の《アトラスの壁》とタイトルのつけられた作品には、1987から始まる西暦らしき数字が横に並び、500,000から3,500,000までの縦の数字(単位:¥/㎥)と波打つグラフのような模様。この模様は過去から未来にかけての横浜の地価を表わしています。

横浜美術館の何層かに塗られた壁を彫ることで地層のような模様が出来ていて、深く掘られた箇所は星のような形になっていました。


ちなみに「アトラス」とはギリシャ神話で世界の西の端で天空を支える罰を負った巨人神のことで、「大西洋」の由来となっていたり「地図」の意味を持っています。

 横浜の地価グラフに《アトラスの壁》というタイトルが付けられたのは何故なのでしょうね。

 

 


  畠 山  直 哉  


 畠山直哉《カメラ》

 

畠山直哉さんは岩手県陸前高田市出身の世界的な写真家です。

東日本大震災後、定期的に畠山さんの故郷である陸前高田市の風景を記録し続けており、今回のヨコハマトリエンナーレでも陸前高田市の風景を写したパノラマ写真を半円状の壁に展示しています。

作品の前に立ち、ぐるっとまわりを見渡すと写真の中に入り込んだような没入感が得られます。(ゴーグル無しの疑似VR体験に夢中になり写真撮り忘れました)


こういった災害の写真は撮影者の感情も写真から感じ取れることが多いですが、

畠山さんの写真は非常に客観的に震災後の状況を撮影しています。

そのため、鑑賞者も何の先入観なく素直な気持ちで作品を見ることができます。

淡々と語りかけてくるような写真を前に、しばらくぼーっとしてしまいました。

個人的にトリエンナーレの出展作品の中で一番印象に残った作品でした。

 




  瀬尾夏美  


瀬尾夏美 《二重のまち》

 

「あの日ね

 大きく地面が揺れたあと、海がぷっくりふくれてね

 海はそのまま弾けてしまって、まちに覆いかぶさった

 やがて海は元の姿に戻っていったが、

 まちの姿はもうなかった」

 

 

 

 

東日本大震災の被災者の話をベースに、原爆や戦争などを体験した人々の話を元に構成されたテキストと鮮やかな絵による絵本のような作品です。色使いがきれいですね。

震災のあった2011年から20年が経過した2031年を舞台に、まちと人々の物語が綴られています。

過去の様々な辛い体験を元に新しい未来の物語として再編成することで普遍性が高まり、多くの人に受け入れられる作品となっています。

鑑賞者に主体性をもたせる新しい記録の形なのではないでしょうか。

 

 

個人的に好きな一枚。 風船のような人、ふわっとしていて脱力するような絵。

 

 


  風間サチコ  

 

風間サチコ《黒い花電車ー僕の代》

 

独自のスタイルでコミカルに現代社会を風刺する木版画家の風間サチコさん

検索エンジンのタイトルは「DAIHONEI(大本営)」検索ワードは「発表」

左のパチンコ台の中に描かれているのはパチンコ台に向かう人々と中央の「破沈孤」の文字

右の防空壕に隠れている人々はパソコンや携帯に夢中になっています。 

 

 風間サチコ《第一次幻惑対戦》(一部)

 

風間サチコさんの展示の中でもとりわけ大きく目を惹いた《第一次幻惑大戦》

学生は皆ガスマスクを着けており、時間割りの上にぎゅうぎゅうにのって勉強していたり、預金通帳や年金手帳、電卓を盾に防衛しています。

端の方ではファミコンの戦車も登場していて一つ一つの発見が楽しい作品。

ユーモアによって社会の闇を白と黒のコントラストで浮かび上がらせています。

 



  ブルームバーグ&チャナリン  


ブルームバーグ&チャナリン 

《帰還》 《フロイトの長椅子の残存繊維を石英楔型検板を用いて観察した際の干渉縞》《ロンドン自爆テロ犯(L-R)2005年7月7日にルートン鉄道駅でハシブ・フセイン、ジャーマイン・リンゼイ、モハメッド・シディック・カーン、シェザッド・タンウィアが防犯カメラによって撮影された。2010年4月22日木曜日、ザ・ガーディアン紙、ポータブル・モニュメント

 

写真家デュオであるブルームバーグ&チャナリンのこの展示は「痕跡証拠」とタイトルが付けられており、壁面には青のグラデーション写真、床には鮮やかなタペストリーが中央に敷かれています。

らにカラフルな立方体キューブが置かれており、なんとも可愛い空間構成です。

色鮮やかでフォトジェニックですね。

この床に置かれたカラフルなキューブは鑑賞者が自由に移動させることができる参加型インスタレーションで参加者が思い思いの形にしています。一見美しく可愛らしい作品ですが、実はテロ問題について扱っているんです。 

 

 

  ブルームバーグ&チャナリン 《ロンドン自爆テロ犯(L-R)2005年7月7日にルートン鉄道駅でハシブ・フセイン、ジャーマイン・リンゼイ、モハメッド・シディック・カーン、シェザッド・タンウィアが防犯カメラによって撮影された。2010年4月22日木曜日、ザ・ガーディアン紙、ポータブル・モニュメント

 

カラフルなキューブはロンドン自爆テロの際に防犯カメラで撮影された、容疑者の色彩を抽出したもの。

テレビや写真は「光の三原色」と言われる赤、青、緑を組み合わせることで表現されているように、媒体を通した色はこの三原色を混ぜることで再現されています。

目に見える小さな色彩の集まりをバラバラに抽出し、映像の中の自爆テロリストを表現しています。


何となしに手にしたキューブが人を象っていた物だったなんて思いませんよね。

 ブルームバーグとチャナリンの作品は目をそらしたくなるような事件などを抽象化しアート作品として表現しています。狂気を感じる作品でした。




  マーク・フスティアーニ  

 

マーク・フスティアーニ《夢幻への一節》


マーク・フスティアーニの無限に続く《トンネル》と《穴》

こちらの作品かなり奥行がありそうですが、壁の厚さ1mもないんです。


トンネルも同様に合わせ鏡のトリックを用いた作品で永遠と続いていると錯覚してしまいそうです。

《穴》は井戸を覗き込む感覚に似た吸い込まれてしまいそうな恐怖を感じます。


 


  パオラ・ピヴィ  


 

奥から《I and I(芸術のために立ち上がらねば)》 《私の大好きなジジ》 《》


イタリア出身のアーティスト パオラ・ピヴィの作品は遊び心満載で、染織された羽毛をまとった色鮮やかなクマ達が目を惹きます。

クマが羽毛を、しかも実際にはありえない色彩を植え付けられているのに違和感を感じない不思議。ピンクのぐだっとしたクマがかわいい。

中央の子グマが母クマの背中を懸命によじ登っている姿も愛らしいですね。

 

 

《I and I(芸術のために立ち上がらねば)》 


この2体のクマは何に立ち向かっているのでしょう。

しかし手触りがよさそうですよね。実際にふわっふわの羽毛の誘惑に負けてしまう人が続出したようで、私が行った際には作品に触れないよう床に枠線が貼られ作品に近づけないよう配慮されていました。それも含めて面白い。



  オラファー・エリアソン  


 

オラファー・エリアソン《Eye see you》

 

オラファー・エリアソンの《Eye see you》小さな太陽のよう。

強烈な光が反射鏡によって拡散され、オレンジの光で照らされた廊下はちょっと異様でした。

暖色の光の効果なのか電気の熱なのかこの廊下にいると暖かさを感じます。


 近くで見るとこんな感じ。

 

ルイヴィトンのクリスマスディスプレイにオラファー・エリアソンが起用されこの作品が日本でも展示されていたので見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。

作品に近づいてみると反射鏡に鑑賞者が写り込み、見られているような感覚。

遠くから見ると太陽ですが近づいてみると目のようですね。

 

オラファー・エリアソン《Green light》

 

 そしてオラファー・エリアソンのもう一つの展示がこの《Green light プロジェクト》

ウィーンから始まったこのワークショップは難民・移民を支援するプロジェクトとして慈善団体と協働で展開されています。

「包摂」をテーマに、移民受け入れを意味する「Green light」を複数人で共同で作ることで難民問題や孤立した人々を社会に接続する意義を再確認します。

 

オラファー・エリアソン《Green light》複数のライトを繋げることで新しい形が生まれます

 

今回のトリエンナーレのテーマである「接続」と「孤独」を考える試みの一つでもあります。

難民問題は日本ではあまり馴染みのない話題ですが、「孤立」する人々とどのように共生するのかは人種や国境を越えた問題です。孤独死やいじめも集団からの孤立によって起こります。10月中もGreen lightプロジェクトを開催しているようですのでお時間合う方参加してみてはいかがでしょうか。楽しそうです

 

 

 

     お わ り に      

 

3回にわたりヨコハマトリエンナーレ2017についてレポートを書いてきましたがいかがでしたでしょうか。気になる作品はありましたか?

現代アートは抽象度が高いものが多く、想像力をもって能動的に鑑賞しなければいけないので非常に疲れますし、その分難しく感じます。でも現代アートが取り扱うテーマは映画や小説などと一緒なんですよね。

ラフな気持ちで鑑賞して、なんだかモヤッとした気持ちを抱えていたら後日気になった作品を調べてみるとより楽しめるかもしれません。

11月5日(日)までトリエンナーレは開催されていますので、気になっている方は是非足を運んでみてください。

 

今回記事を書くにあたって、作品の前で見てるときはいまいち理解できなかった作品も

アーティストの経歴や作品についてなどを調べることで多くの発見を得られました。

ヨコハマトリエンナーレに行かれる際はぜひ公式アプリやカメラなどをフル活用して楽しんでくださいね。

以上、ヨコハマトリエンナーレ2017のレポートでした!



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