吹く風も柔らかく桜も満開に近づきお出かけ日和の日々が続いていますね。
今回は春の暖かな陽気を感じさせるお散歩やデートにおすすめな
印象派絵画の美術展『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』をご紹介致します。
なんと、日本でも高い人気を誇るモネの「睡蓮」が見れちゃうんです!
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」は、美術品コレクターであるエミール・ゲオルク・ビュールレが収集した600点のコレクションのうち厳選された64点が展示されています。
構成は美術に馴染みのない人でも一度は耳にしたことがあるであろう印象派の巨匠(ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、ゴーギャンなど)の傑作を中心としている為、誰が見ても楽しめる内容となっており、公開作品の半数が日本初公開の作品です。
コレクションは2020年までにチューリッヒ美術館に移管され、常設展示されることが決定されている為、ビュールレ・コレクションとしてまとまって鑑賞できるのは、今回の機会を逃すと日本では二度と訪れない最後のチャンスです!
グッズにも力が入っていて会場限定の可愛いお土産がたくさん並んでいましたよ。
会場 |
新国立美術館 企画展示室1E |
最寄駅 |
東京メトロ千代田線 乃木坂駅直結 東京メトロ日比谷線 六本木駅 徒歩約5分 都営地下鉄大江戸線 六本木駅 徒歩約4分 |
会期 |
東京展 平成30年2月14日(水)~5月7日(月) 福岡展 平成30年5月9日(土)~7月16日(月・祝) 名古屋展 平成30年7月28日(土)~9月24日(月・祝) |
開館時間
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10:00~18:00(毎週金・土曜日、4月28日(土)~5月6日(日)は午後8時まで)※入館は閉館の30分前まで ※2月21日(月)を除く毎週月曜、2月13日(火)は休館 |
観覧料 |
一般 1,600円(1,400円) 大学生 1,200円(1,000円) 高校生800円(600円) ※中学生以下無料、心身に障害のある方及び付添人1名は無料 ※前売券、20名以上の団体券は( )内料金 |
他のブログや記事を書かれている方の鑑賞時間を平均してみると1時間~1時間30分程のようです。私はサクッと一通り見終えた後に気になる作品のみ時間をかけて鑑賞するタイプなので、1時間程度で全て見ることが出来ました。
作品数は少ないですがボリュームがあり満足度の高い展示ですので、全体をじっくり鑑賞したい場合はゆとりをもって2時間程とられた方がいいかもしれません。
私が来館したのが土曜日の10時~11時頃からということもあってか、やや混雑している程度で鑑賞には問題ない程度でした。
比較的空いている印象でしたが、12時を過ぎると人が増え始めどの作品にも人だかりが出来るようになっていました。
グッズ売り場も大変混雑しますので落ち着いて鑑賞したい場合は開館してすぐか、閉館間際に行くのがおすすめです。
1890年生まれのドイツ出身の実業家。
ドイツの名門大学で文学、哲学、美術史を学んだ後、二度の世界大戦を経験したビュールレは30歳でスイスへ移住します。
ドイツ時代に興した事業で築いた財産を資本にかねてよりの念願であった美術品収集に情熱を注ぎ、生涯を終えるまでの20年間で600点を越えるプライベート・コレクションを築きました。
印象派やポスト印象派の質の高いコレクションで知られており、世界でも屈指のコレクターとして注目を集めています。
印象派とは19世紀後期フランスで起こった芸術運動で、代表的な作家にモネ、ミレー、ルノワール、ゴーギャン、ゴッホなどがあげられます。
産業革命後の激動の時代に都市の発展やジャポニズムなどの影響を受け、従来の写実主義とは異なり光や空気を捉えることを重視していました。その為、細部まで描き込まず素早いタッチで描き上げ混色の少ない明るい軽やかな色彩が特徴的です。
サロンでの評価が絶対であった当時のアカデミックな絵画が評価された美術会界では、「未完成」「印象しか残らない」と揶揄されていました。
そんな日陰者の印象派絵画でしたが、アメリカへの販路が開けたことがきっかけに徐々に評価され、その後の美術史に大きな影響を与える存在として認められていきました。
印象派展で展示されている作品のうち半数は日本初公開とそれだけでも魅力的ですが、なんとモネの《睡蓮の池、緑の反映》は今回初めてのスイス国外での貸し出しです。
門外不出といわれたモネの最高傑作は高さ2m×横4mと大きな作品で迫力があります。
写真撮影可ですのでカメラなどお忘れなく!
至上の印象派では、巨匠達の名作揃いで美術にあまり興味のない方でも親しみやすい内容となっているかと思います。
印象派を中心として写実主義からキュビズムまで幅広いジャンルの作品が、64点とコンパクトにバランスよくまとめられているので飽きることなく最後まで楽しめました。
このバランスの良い構成というのはビュールレのコレクションの特徴でもあります。
大学で美術史を学んだビュールレは、画家達の時代背景や関連性を調べ上げた上で作品を体系的に集め、作品理解を深めていたんです。
印象派を中心に関連するロマン主義、写実主義、ポスト印象派、フォーヴィズム、キュビズムなどが計画的にコレクションされておりビュールレの冷静な視点と真摯な姿勢が伺えます。
このビュールレのこだわりが反映された以下の10章構成で展示されています。
章の下に簡単な解説をつけてみましたのでご参考になれば幸いです。
縦や横の繋がりが意識された章の構成なため、同じ対象を描いているのに時代が経つとまったく違った描写方法をとっていることが一目でわかりますし、誰がどの画家に影響されたのか、どのように作風が変化していったのか、など様々な発見を楽しめます。
第一章 肖像画
…伝統的な肖像画から西欧絵画の200年間の移り変わりを追う
第二章 ヨーロッパの都市
…風景表現の変遷を辿る
第三章 19世紀のフランス絵画
…マネを中心に主題性の変化を捉える
第四章 印象派の風景ーマネ、モネ、ピサロ、シスレー
…印象派の象徴的な風景画家たち
第五章 印象派の人物ードガとルノワール
…人物画を主な対象としたドガとルノワールの対極的な印象派を対比
第六章 ポール・セザンヌ
…ビュールレ・コレクションの中で最も充実しているセザンヌの作品を初期~最晩年まで網羅
第七章 フィンセント・ファン・ゴッホ
…6年間で多様な作風で描いたゴッホの柔軟性を6点の作品からみる
第八章 20世紀初頭のフランス絵画
…ボナール、ゴーギャンらモダン・アートに繋がる象徴派やナビ派、綜合主義の作品を紹介
第九章 モダン・アート
…20世紀最大の画家と称されるピカソやブラックらに代表される20世紀初頭の
第十章 新たなる絵画の地平
…門外不出のモネの最高傑作《睡蓮の池、緑の反映》が日本初公開!
本展公式HPでの見どころ紹介でも「全て一人で集めました」と紹介があります。
コレクションはビュールレの人生観を反映していると言っても過言ではないということでしょう。
どのような視点でコレクションしていたのか、どの作品がビュールレのお気に入りだったのだろうか、など考えながら鑑賞するのも面白いですね。
全てビュールレが一人で集めたコレクションが今回の「至上の印象派」ですが、ビュールレ本人の人生同様、コレクション達も数奇な運命を辿っています。
キービジュアルに選ばれた2作品にまつわる話をご紹介したいと思います。
2008年にセザンヌの「赤いチョッキを着た少年」、モネの「ベトゥイユ近辺のひなげし」、ドガの「ルピック伯爵と娘たち」、ゴッホの「花咲くマロニエの枝」の四点がビュールレ美術館から盗まれた事件です。(当時の時価総額約106億円相当)
この近代西洋美術史の巨匠らの作品盗難事件は当時ヨーロッパ至上最大の美術品盗難事件とされ大きな話題となりました。
事件の結末はといいますと、絵画は容疑者の車に隠されており全て美術館へ返還され今回日本で窃盗にあった4点が展示されています。
そしてキービジュアルに選ばれているもう一つの作品である、イレーヌ嬢の肖像画もまた波乱の多い運命を辿った絵画です。
皆さまご存知のルノワールの最高傑作と名高い「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」は、白い陶器のような滑らかな肌に吸い込まれるような青い目、豊かなブロンドの愛らしい少女が描かれている作品です。
この作品のモデルは1880年フランスのパリに暮らしていた当時8歳の少女です。
ルイ・カーン・ダンヴェール伯爵というユダヤ系銀行家の父をもつ裕福な家庭に育った令嬢です。
「シャルパンティエ夫人とその子供たち」という温かな家族の肖像画を描き一躍サロンで評判となったルノワールにイレーヌの両親が娘達の肖像画を依頼したことで「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」は制作されました。
このイレーヌの肖像も前作同様サロンで大変な評判となったのですが、依頼主である両親は当時の美術界で高く評価されていた古典的な作風を好んでいた為、この絵を気に入らず人目に触れる場所には飾らなかったといいます。
そして時は流れイレーヌ嬢は19歳の時でユダヤ系の裕福な銀行家と政略結婚した後、一男一女に恵まれます。
しかし10年程で夫婦生活は終わりを遂げ、イタリア貴族のサンピエリ伯爵と再婚しています。
その後、世界大戦が勃発しナチスドイツによってフランスが占領下に置かれるなどイレーヌ達を取り巻く環境は大きく変化していきます。
パイロットであった長男は第一次世界大戦で命を落とし、イレーヌもサンピエリ伯爵と離婚、そしてイレーヌ70歳の時にナチスドイツがポーランドに侵攻し第二次世界大戦が始まりました。
このときヒトラーの野望は2つありました。1つはユダヤ人の絶滅、そしてもう1つが美術館の建設でした。
幼少期から芸術を愛していたヒトラーはこの野望を果たす為、フランス中の美術品を大量に略奪しています。イレーヌの肖像も印象派を好んでいたナチスのNo.2であるゲーリングに持ち去られ長い間作品は行方をくらましていたといいます。
そして夫、娘、孫、妹達がアウシュビッツ政策の犠牲となってしまいました。
サンピエリ伯爵と結婚する際にユダヤ教からカトリックに改宗し、イタリア風の名前となっていたイレーヌ唯一人が奇跡的に戦火から逃れられたのです。
終戦後、74際となったイレーヌは絵の肖像権を主張し、肖像画は彼女のもとへ戻りましたが、3年後に手放してしまいます。
そして、次にイレーヌの肖像を手に取ったのがスイスに帰化したドイツ人で、ナチスドイツを始めとした世界各国に武器を売り莫大な財産を築いた武器商人 エミール・ゲオルク・ビュールレでした。
ビュールレがこの経緯を知っていたかは定かではありませんが、娘の部屋にこの絵を飾り毎日のように眺めていたといいます。
世界大戦によって人生を翻弄された少女と、世界的なコレクターとなった青年の皮肉な運命を思うと感慨深いものがありますね。
このように作品の背景などをちょっとした豆知識として覚えておくと、鑑賞した際の印象もまた少し変わってくるかもしれません。
美術史に名を残す印象派巨匠達の作品を一挙に見られる機会もあまりないですし、印刷物ではわからない絵具の立体感や光の加減で微妙に変わる表情などぜひ生でご覧になってみてください。あまり印象派は好んで見ない私ですが、その後のモダンアートへの発展の道筋を辿るようで非常に興味深く楽しく鑑賞できました。
個人的に気になった作品シニャック「ジュデッカ運河、ヴェネツィア、朝」、
マネ「オリエンタル風の衣装をまとった若い女」、ルノワール「泉」これら三点はそれぞれの作家の光の捉え方が個人的にツボで見入ってしまいました。
ピサロの「会話、ルーヴシェンヌ」も今にもご近所さん同士の会話が聞こえてきそうな臨場感があり爽やかな作品でした。
そして何よりイレーヌの肖像画とピカソの作品が見れたことが嬉しくて…
間近で見たイレーヌちゃん、本当に美少女でした…想像と違わない可憐な姿、うっとりするくらい可愛らしかったです。
そんな今回のキービジュアルであるイレーヌ嬢、赤いチョッキを着た少年、睡蓮などの三作品はグッズでも大活躍してまして、クッキーや飴などのお菓子からメモ帖やスマホケース、マスキングテープにリカちゃん人形などなど…豪華なグッズ売り場が展開されていました!
どの商品もパッケージがとても可愛いのでこちらもチェックしてみてくださいね。