暑い日が増えたかと思いきや連日の春雨で朝晩はまだまだ冷え込みますね。
今回は近現代アート好きな方に特におすすめ!
横浜美術館で開催されている展覧会『ヌード展』を感想交えてご紹介致します。
今回横浜美術館で開催されている『ヌード NUDE —英国テート・コレクションよりNUDE: ART FROM THE TATE COLLECTION 』は、世界でも屈指の西洋近現代美術コレクションを所蔵するイギリスのテートからヌードをテーマにした作品が一堂に集められています。
なんといっても見どころは大理石で作られた高さ180センチ、重さ約3トンのロダンの大型作品《接吻》が間近で見れること!
そして、同時開催している横浜美術館のコレクション展は、ヌード展を見終えた後そのまま順路で鑑賞できるのでお時間に余裕があるのであればぜひご覧になってください。
コレクション展は撮影も可能でヌード展よりも人が少ないので、じっくり見ることが出来ます。
展示会名 | ヌード NUDE —英国テート・コレクションよりNUDE: ART FROM THE TATE COLLECTION |
会場 | 横浜美術館 |
会期 |
平成30年3月24日(土) ~ 6月24日(日) |
休館日 |
木曜日/5月7日(月)(※ただし5月3日(木・祝)は開館) |
開館時間 | 10:00 ~ 18:00(入館は閉館の30分前まで)※5月11日(金)・6月8日(金)は20:30まで |
観覧料 |
当日:一般 1,600円(1,500円)/大学生 1,200円(1,100円)/中・高校生600円(500円) ※小学生以下無料※65歳以上は1,500円(要証明書、美術館券売所でのみ販売) ※20名以上の団体券は( )内料金、要予約 ※観覧当日に限りヌード展の観覧券で、「よこはま美術館コレクション展」も観覧可能 |
ヌード展自体は1時間30分~2時間程でややじっくり見れるかなという印象です。
同時開催されているコレクション展もヌード展の鑑賞券で入場無料で見れるので、こちらも含めた鑑賞目安時間は2時間~3時間程度です。
ヌード展、コレクション展ともにボリュームがあり非常に見応えがありますので時間に余裕をもって来場されることをおすすめ致します。
私が来館したのは平日のお昼頃だった為か、各作品の前に一人見られてる方がいる程度で快適に鑑賞できました。
絵画のみでなく力強い生命力をもった彫刻作品も多く、見応えがあり個人的にはここ最近行った展覧会の中で一、二を争う面白さでした。
官能的な作品や性への問題を取り扱った作品など生々しくグロテスクとも取れる作品があるので、好き嫌いは激しく分かれる展覧会であることは間違いないと思います。
女性のヌードだけでなく、男性ヌードや同性愛表現のある作品も含まれているので、人間の性や人種などの多様性について考察するきっかけにもなるかと思います。
そんなこと考えなくても絵画、写真、彫刻と幅広い種類の作品が展示され飽きさせません。
深く考えずとも「きれい」「気持ち悪い」と直感的に刺激を楽しめる展覧会なので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
近現代美術の殿堂である英国・テートから集められた総数約130点のヌード作品たちは、
オーストラリア、ニュージーランド、韓国を巡ったのち、日本へとやってきました。
日本で初開催される本展は、絵画、彫刻、版画、写真など展示し、19世紀後半ヴィクトリア朝から現代までの裸体表現の歴史を辿っています。
中でも今回の展覧会の目玉であるロダンの《接吻》は必見です!
今回展示されている《接吻》は世界に三体あるうちで最も美しいと言われており、大理石の柔らかな乳白色の肌はまるで生身の人間のような温かみをもちます。
この《接吻》のモデルとなった男女はダンテの《神曲》に登場するフランチェスカと義理の弟であるパオロです。二人の悲恋(不倫)を題材にしており、その姿が卑猥だとされ一時期は布で全体を隠されていた時期もありました。(このエピソードは公式サイトで紹介されていますのでぜひご覧ください)
そんなエピソードをもつロダンの接吻、当初は《考える人》同様に《地獄の門》の一部となっていましたが、後に独立した作品として発表されました。
男性の女性の腰に添えられた手はどこかぎこちなく戸惑いと優しさが伺え、女性の手は男性を引き寄せるようにしており情熱的な愛を感じさせます。
見る角度を変えると足の重なりが見えないからかエロティックさが薄れ、なんだか神秘的に見えるような。ライティング効果でしょうか。
男性の筋肉と女性の柔らかなラインが美しいです。
360度ぐるっと回ってみてお気に入りの角度を探してみるのも楽しいですね。
このロダンの『接吻』のみ写真撮影が可能ですのでカメラのご用意をお忘れなく!
ヌードを描くことを禁止されていた19世紀後期ヴィクトリア朝では、歴史や神話を題材にすることでヌード表現が黙認されていました。
そんな禁忌の時代から現代に至るまでの約200年間の歴史を8章構成の展示から紐解きます。
〔一章:物語とヌード/二章:親密な眼差し/三章:モダン・ヌード/四章:エロティック・ヌード/五章:レアリスムとシュルレアリスム/六章:肉体を捉える筆触/七章:身体の政治性/八章:儚き身体〕
以下、私が気になった作品を数点ご紹介致します。
アンナ・リー・メリット《締め出された愛》
1909年に制作された作品で、当時女性画家が男性ヌードを描くことは認められていませんでした。そのため、少年をモデルに本作を描き上げたといわれており、この作品が公の場で発表された最初の男性ヌードという点で美術史上重要な作品の1つに数えられています。
扉の前に両腕を突き出し扉を開けようとしていますが、扉は動かず悲しげに俯く少年の姿が描かれています。この少年はクピド(キューピッド)なのですが本来あるはずの翼がありません。
《締め出された愛》はアンナの結婚後三か月で亡くなった夫の墓碑の為に考案されたデザインをもとにされており、愛を失った象徴として翼は消され扉にすがるような切ない背中が描かれています。
泣いているような後ろ姿からは絶望や拒絶などが感じられる哀しくも惹かれる絵です。
アルベルト・ジャコメッティ《歩く女性》
とにかく薄い!初期の作品なので表面は滑らかでジャコメッティにしてはやや肉付きがいいかなという印象ですが、女性を象徴する胸のふくらみ以外は平面的で縦に細長く引き延ばしたようなフォルムが印象的です。
写真で見るとすこし頼りないような印象を受けますが実際に見てみると神々しく感じるほどの存在感があります。
バレリーナのような美しい立ち姿は肉付きを最小限にすることで、歩くという動作にフォーカスを当てています。当初はシュールレアリスム展に出品するため頭部と腕が付いていましたが、紆余曲折を経て現在の姿に落ち着いたようです。
後に発表した『歩く男性』の前のめりな力強い姿とは違い、女性の繊細さとしなやかさを表現したような一歩を踏み出す『歩く女性』に魅入ってしまいました。
ポール・デルヴォー《眠るヴィーナス》
それぞれの時代で「ヌード」の切り取られ方が全く違い面白かったです。
近現代頃からヌードがエロティックな対象から人間のありのままの姿や根源的な問いに向かっていく傾向が強いように感じました。
特に六本木の森美術館前に展示されている蜘蛛の巨大オブジェ《ママン》の作者で知られるルイーズ・ブルジョワの作品は哲学的イメージを想起させます。(6章肉体を捉える筆触《女性》《カップル》など)
デフォルメされたモチーフを白い紙に真っ赤な絵具で滲んだように描かれた作品は、力強く生命力に溢れ、どこかグロテスクでもありました。
実際に見たときは一度目をそらして通り過ぎたのですが、不思議と作品の前に戻り食い入るように鑑賞していた不思議な魅力をもつ作品です。
正直全体的に作品の説明が充実していたらいいのに、と感じましたが絵画、版画、彫刻、写真など多種多様な作品から直感的に得られるものも多く考察するのが楽しい展示でした。
同時開催されているコレクション展も多種多様な作品が展示され見応えのあるものとなっています。ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。