企画展名 | ミケランジェロと理想の身体 |
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会場 | 国立西洋美術館 |
アクセス | JR上野駅 徒歩5分 |
会期 | 2018年6月19日(火)~2018年9月24日(月・休) |
休館日 |
月曜日、7月17日(火) ※7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・休)は開館 |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時30分毎週金・土曜日:午前9時30分~午後9時※入館は閉館の30分前まで |
観覧料 |
当日:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円団体:一般1,400円、大学生1,000円、高校生600円 ※団体料金は20名以上※中学生以下は無料。 ※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください) |
鑑賞時間目安 | 約1時間~1時間30分 |
混雑度 | やや混雑 |
展示会特設サイト |
ミケランジェロと理想の身体 |
ミケランジェロは、
ミケランジェロ・ブオナローティといい
1475年から1564年までイタリアで活躍した芸術家です。
『ダビデ像』や『ピエタ』が最も有名な作品ではないでしょうか。
『ダビデ像』1504年 アカデミア美術館
ピエタと並ぶミケランジェロの代表作。
旧約聖書の登場人物ダビデが巨人ゴリアテとの戦いで
岩石を投げつけようとしている場面を表現しています。
画像では2mくらいに見えますが、
実際は5.17mの非常に大きな彫像です。
1498 - 1499、サン・ピエトロ大聖堂
ミケランジェロが23歳~25歳頃の作品
死せるイエスを抱きかかえ嘆き悲しむ聖母マリアの像です。
ミケランジェロが自らの署名を書き入れた唯一の作品として知られています。
この作品によりミケランジェロの名声は確立しました。
また、この他にも
システィーナ礼拝堂の天上画や壁画『最後の審判』を描いた画家でもあります。
多彩なミケランジェロは建築家や詩人としての顔ももち、
「万能人」や「神のごとき」と称賛されていました。
レオナルド・ダヴィンチと共に
ルネサンスを牽引した中心的人物として知られており
西洋美術界に大きな影響を与えた芸術家の一人に数えられています。
「万能人」と称され多彩な芸術家であったミケランジェロでしたが
自身は自らを画家や建築家ではなく「彫刻家」と呼んでいました。
彫刻家であることへのプライドを持っていたミケランジェロは
システィーナ礼拝堂の天井画の制作の際には
父へ宛てた手紙の中で「絵は私の本業でないので時間の浪費」と綴っていたり
「我は画家にあらず」という詩を友人へ送っています。
後に代表作の一つに数えられる作品も実は渋々描いていたんですね。
2.身体美を追求したミケランジェロ
ルネサンスとは「再生」を意味する言葉で、
ギリシャ・ローマの古典文化を復興させる文化運動です。
1400年頃にイタリアで起こったルネサンスでは
美しい肉体表現をもつ古代ギリシャ彫刻がお手本でした。
古代ギリシャでは鍛え抜かれた完璧な肉体が最上の美とされていた為、
オリンピック選手や兵士などに見られる
鍛え抜かれた男性の裸体が彫刻の根幹をなしています。
この古代ギリシャ・ローマ彫刻に影響を受けた
ミケランジェロ以外にも
当時への再生を試みたルネサンス期では
筋骨隆々な男性の裸体彫刻が盛んに作られました。
ルネサンス期に古代ギリシャ彫刻の古典的なポーズである
コントラポストが再発見されたことにより
彫像に動きとリズムが生まれ、
より美しく均整の取れた調和した肉体美と精神を表現されました。
本展覧会では「男性の肉体美」をテーマとしています。
なぜルネサンスが古代ギリシャの彫刻をお手本とし、
「男性の肉体美」が重要になるのかというと
芸術の起源を辿ると古代ギリシャの男性の裸体彫刻に辿りつくためです。
その後、彫刻から絵画やその他の美術表現へと派生していくので
男性裸体彫刻は芸術の基本ともいえます。
しかし、芸術の根幹を担う重要なテーマであるにも関わらず
女性の肉体美に迫る展覧会が多く開催されているのに対して
(最近だと横浜美術館のヌード展が記憶に新しいですね)
男性ヌードの展覧会はほとんど開催されてきませんでした。
これは男性裸体彫刻を語る上で欠かせない
ミケランジェロの作品借用許可が非常に困難だったからです。
本展では2点の作品が展示されていますが、
一点は開催のギリギリまで交渉に当たっていたほど。
それもそのはず
人の身長ほどある大きさと重さ2.5tの彫刻は
大理石製で非常にデリケート…
世界に約40点しかない世界の至宝ともいえる作品が
万が一壊れたなんてことになったら洒落になりません。
そんなハードルの高さから
実現することはないと言われていた
男性の肉体美をテーマとした企画が
今回実現し2点の借用許可がおりた本展はまさに奇跡としか言えないのです。
ラオコーン
《ラオコーン》 ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ
1584年頃 ローマ、個人蔵、ガッレリア・デル・ラオコーンテ寄託
191×145×68cm 大理石
高さ約2mのラオコーンはミケランジェロ他
ルネサンスの芸術家に大きな影響を与えた作品です。
本展で展示されているラオコーンは
ヴィンチェンツォ・デ・ロッシが1506年に発見された
古代の傑作ラオコーンの再現を試みた作品です。
今回の展示のために3つに切断して運ばれてきた巨大な大理石彫像
こちらの作品のみ写真撮影が可能となっています。
若き洗礼者ヨハネ
ミケランジェロが20歳頃に作られたといわれている作品で、
洗礼者ヨハネを8歳の少年の姿で現しています。
残念なことにスペイン内戦で少年の体は砕け散り
全体のわずか40%しか見つかりませんでした。
写真を元に修復が行われ
失われたパーツが発見された際に復元できるよう
修復部分はマグネットで接着されています。
継ぎ接ぎ姿になってしまいましたが
聡明さをうかがわせる可愛らしい顔立ちが印象的でした。
ダヴィデ=アポロ
ミケランジェロ「ダヴィデ=アポロ」(1530年頃)
バルジェッロ国立美術館 CC BY-SA 4.0 by Paolo Monti
ノミの跡が残り、細部の再現が
未完成のまま放置されてしまっている壮年期の作品です。
制作途中で『最後の審判』の制作依頼の為
フィレンツェへ旅立ちそのまま
帰らぬ人となってしまった為に未完成のままとなっています。
肩に背負っているものが、投石器ならダヴィデ
矢筒ならアポロ、と判別が出来るのですが
この肝心の部分が荒削りなため
「ダヴィデ=アポロ」とタイトルがつけられました。
おわりに
今回の展示で私が気になった作品は『ダビデ=アポロ』でした。
未完故にノミ跡の残る荒々しい肌はより生生しく
筋肉の表情が出ているように感じました。
筋肉や骨の様子がじわじわと浮かび上がる
未完成ながら非常に美しい作品でした。
ずっと眺めていたくなるような魅力と迫力があり
とても印象に残っています。
企画展全体を通して
肉体美とはなるほどこういう事か。
と思える展示でした。
入場前にロビーで10分程の紹介動画が紹介されているのですが
一通り見てから鑑賞するとより楽しめると思います。
今後日本で見られるかわからない奇跡の展示ですので
ぜひご鑑賞ください。