写真のお品物は以前いわの美術でお買取りいたしました、アルフレックスのテーブル「STATION CENTRO(ステーション チェントロ)」です。
ダイニングテーブルとして空間を贅沢に使う円形と、中心の一本の支柱は、座る場所と人数が限定されずフレキシブルな使い方ができます。
アルフレックス(Arflex)はイタリア語で家具を意味するarredamentiと柔軟性のflexibilityを組み合わせた造語で、ミニマムで洗練されたデザインの裏に、使う人を主役として豊かな暮らしを提案する会社の精神を体現しています。
アルフレックスは1951年にイタリアで創業されたのち、1969年からはジャパン社が設立され、現在日本国内に出回る製品の殆どはアルフレックス・ジャパンの製品です。国内生産の利点を生かし、またデザイン面でも本国に勝るとも劣らない品質を保持しています。
戦後間もない1947年に、カルロ・バラッシはArflexの前身となる会社を組織し、若き建築家でありデザイナーのマルコ・ザヌーゾと協業を始めます。
カルロ・バラッシはイタリアの有名タイヤメーカーであるピレリの技術者であり、ピレリは第二次大戦中に航空機にも軍事利用されていたエラスティックゴムベルトと成型ゴムなどの新素材を有していました。
一方ザヌーゾは美術学校を卒業後デザイン事務所を開設した傍ら、インテリア雑誌編集の仕事に就くなど多才で、当時まだ木工中心の工芸品であった家具に新しい素材と技術を応用する提案をします。
前身となる実験的プロダクト「Antropus」を制作したのち、最初の代表作となる椅子「Lady」が1951年の第9回ミラノトリエンナーレでグランプリを獲得し、アルフレックスは一躍人気家具メーカーとなります。
デザインと素材とともに新しい工法も確立し、当時は職人による手作業が大半を占めていた家具製造過程の一部を、研究と実験を重ねて工場生産可能なものに進化させました。
その後もザヌーゾの「Martingalaチェア」や「Sleep-o-matic ソファ」をはじめ、フランコ・アルビーニのデザインによる「FIORENZA」など数多くのヒット作を生み出します。
アルフレックス・ジャパンを設立した保科正(ほしな ただし)は京都で医師の家系に生まれますが、違う道を志し多摩美術大学を卒業したのち、デザイン会社とアパレル会社に勤めました。
1960年代に一世を風靡したVAN JACKET社に居ながら、当時の日本の衣食住のうち住だけが遅れていることに問題を感じます。
洋服を着て洋食を食べながら和室に正座する生活に疑問を持ち、日本人によって日本人の暮らしをより良くする目的を持ち、退職し単身イタリアへ渡ります。
1950年代のミラノは建築家ジオ・ポンティや企業家のチェーザレ・カッシーナ、デザイナーのガエターノ・ペッシュなど重要人物が多数活躍し、インテリア分野のモダンデザイン先進都市でした。
保科はアルフレックスに入社し、ソファ製造工場の工員からインテリアのキャリアをスタートします。3年間の修行でイタリアンモダンを学んで帰国すると、極東地域での販売権とオリジナルデザイン製造権を保有するアルフレックス・ジャパン社を設立しました。
アルフレックス・ジャパンの設立にあたっては、ヴァン・ジャケットの出資があり子会社の位置づけでした。
ヴァン・ジャケット創業者の石津謙介はアイビールックで日本のメンズファッションに革命を起こした人物であり、ファッションはライフスタイル全体に及ぶとの考え方を提唱し、これはアルフレックスに通じるものがあったと言えます。
アルフレックス・ジャパンは青山に一号店を構え、日本のインテリア界に初めてモダニズムを展開し注目を浴びます。
ソファの工程を1から学ぶ中で培った保科のイタリアンモダンの感性はオリジナル商品に発揮され、1971年には最初のヒット作「レインボー」ソファが生まれます。
日本人に合うオリジナル商品を開発できたのは、保科が家具職人として働いた経験の賜物で、アルフレックス・ジャパンがイタリア生まれの日本育ちと言われる所以となっています
その後もイタリアに逆輸入された「マレンコ」など画期的な商品を生むものの、1970年代は未だ家庭のリビングにソファでくつろぐスタイルが普及せず、イタリアンモダンのセンスが広く一般に理解されるのは1980年代に入ってのことでした。
80年代半ばにようやく日本人のライフスタイルが大きく洋風化すると、ソファ以外のリビング家具も好調となり、その後はリビングからダイニング・ベッドルームまでトータルコーディネートの幅を広げていきます。
リビングでの過ごし方や購買層の需要の変化にも対応し、テレビを囲むスタイルから個々のデジタル機器でくつろぐスタイルへ、トータルでなく一点セレクト購入が可能なラインナップを時代に合わせ提案し続けています。
アルフレックスのステーション・チェントロは現在では廃盤となっており、現行品とは脚部などのデザインが異なるため中古家具も人気となっております。
今回お買取りしましたお品物はテーブル天板に傷も少なく、全体的にコンディション良好であったため高値でのお買取りとなりました。
いわの美術では骨董品・美術品を中心にお取り扱いしておりますが、中古市場で人気の高いモダン家具も対象としております。
ご自宅やご実家、蔵やお店の整理などでご不要になりましたアルフレックス社の家具の高価お買取りをご希望でしたら、ぜひ、いわの美術にご相談くださいませ。
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