西岡小十は昭和から平成にかけて活動していた陶芸家で、古典技法である絵斑唐津・梅華皮の復元に成功し、古唐津を現代によみがえらせた人物です。古唐津の神様と呼ばれ、晩年まで唐津再興に尽力しました。
作家について
西岡小十は1917年(大正6年)、佐賀県唐津市に生まれました。関西大学を卒業後、商社に就職しますが兵役に就くことになり、満州にて終戦までの二年程従軍します。
帰国後は生命保険会社に五年程勤務しますが、1950年(昭和25年)唐津に帰郷しました。
ちょうどこの頃やきもの好きの友人に誘われて初期唐津の古窯址である「帆柱窯」に行くのですが、そこで見た斑唐津の陶片の美しさに心奪われたといいます。その後古窯址の発掘調査に携わるようになりますが、当時無職だった西岡小十にとっては生活がかかっていました。
「何か掘って来ないと食えない。楽しみや遊びではなく生きるための発掘だった。陶片を掘って来なくては帰れないから真剣だった」と本人が後に語っています。いいものは高く売れるし、そうでないものは売れない。だから必然と目は肥えてくる。この時の経験が陶芸家としての力を付けさせたのかもしれません。
そんな中1960年(昭和35年)に転機が訪れます。当時文化財調査官だった小山冨士夫との出会いです。
これをきっかけに「発掘した陶片のような古唐津を再現したい」という気持ちが募り本格的に作陶を始め、1971年(昭和46年)には割竹式登窯「小次郎窯」を開窯しました。公募展などには一切出品せず、作品は個展のみで発表し続けました。
陶芸界の巨匠である荒川豊蔵や藤原啓とも交流を持ち、柔らかな志野を意識した温かみのある作品や備前のような窯変の効いた作品もみられるようになります。そして試行錯誤の末、絵斑唐津や梅花皮唐津の復元に成功し、唐津の名手として西岡小十の名は全国に知れ渡りました。
「唐津焼の事なら知らないことはない、古唐津の神様」───小山冨士夫
「唐津を熟知している西岡には何も言うことがない」────荒川豊蔵
ここまで高い評価を得ながらも唯一の師と仰ぐ小山冨士夫の進言を守り通し、生涯世間の名利私欲とは無縁の無冠であり続けました。彼の存在は現代唐津において多大な影響を与えた存在と言っていいでしょう。
唐津焼について
「一楽・二萩・三唐津」という言葉をご存じでしょうか?これは茶道の世界において茶人が好む茶陶の順位を表す言葉で、唐津焼は古くから愛好家の多いやきものとして知られています。
有田焼のような陶石から作られる磁器とは違い、陶土から作られる陶器に分類され、ざっくりとした粗い土を使用した素朴な雰囲気を多種多様な装飾技法が特徴で、1988年(昭和63年)には国の伝統工芸品に指定されました。一口に唐津といっても技法によって見た目や風合いが全く異なるので、ここでは代表的な唐津焼の種類をいくつかご紹介したいと思います。
絵唐津(えがらつ)
鬼板と呼ばれる鉄溶液で絵を描き、釉薬をかけて焼き上げたもの。唐津焼を代表する種類で、モチーフは草木や花・鳥など多岐にわたり、素朴ながら繊細で力強い表情を生み出しています。
朝鮮唐津(ちょうせんがらつ)
鉄釉と灰釉の二種類の釉薬を使い、高温で焼くことで釉を自然に溶け合わせたもの。黒く発色する鉄釉を下にかけ、乳白色の灰釉を上から流すものが多くみられ、李氏朝鮮の陶工から伝わった伝統的な技法です。
斑唐津(まだらがらつ)
白濁した藁灰釉を用いて、高温で焼き上げたもの。素地に含まれる鉄分や燃料の松灰が溶けだし、表面に青や黒の斑点ができやすいことからその名が付きました。今回画像に使用しているものもこちらです。
三島(みしま)
半乾きの素地に印花紋・線彫などの文様を施し、化粧土を塗り、さらに釉薬を流しかけて焼き上げたもの。朝鮮の李朝三島の技法を受け継ぎ、唐津では江戸時代から作られ始めました。
粉引(こひき)
褐色の素地が半乾きのうちに白い化粧土をかけ、乾燥させてから灰釉などをかけて焼き上げたもの。古くから朝鮮で用いられた技法ですが、古唐津に粉引は見られず近代になってから取り入れられました。
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