山本知克(やまもと ともかつ)は日本画家の山本倉丘の長男として、1927年に京都府京都市で生まれました。
現在の京都市立芸術大学にあたる、京都市立美術専門学校の日本画科在学中に、1947年の第3回日展で「霧の朝」が初入選して早くから頭角を現し、翌1948年に同校卒業後は堂本印象に師事します。
1953年には第9回日展で「塀に沿う路」が特選、白寿賞、朝倉賞を受賞し、1954年第10回日展で「坂に建つ街」が特選、白寿賞となり、以降出品委嘱となります。
同年第5回京展で「疏水」が京都市長賞を、第3回関西展で「風景」が関西展賞を受賞し、父の山本倉丘に続いて京都画壇や関西美術界でも活躍することとなります。
戦後10年間の京都および日本の美術界では、戦中の統制から一転して敗戦を経て、あらゆる分野で前衛的・抽象的な表現が流行しました。
日本画においては永く続く画塾制度など日本画壇の封建的側面と、花鳥画など伝統的な画題に限定する因習を批判して、前衛日本画団体のパンリアル美術協会などが結成されたのも1948年と戦後直後と言える時期でした。
1955年には師である堂本印象が日展で抽象日本画を発表し、物議を醸し美術界に大きな論争を呼びます。しかし、日本に戦後日本美術の一大潮流となるアンフォルメルを紹介したフランス人美術評論家、ミシェル・タピエはその問題作が絶賛し、美術界の潮流も次第に変化していきます。
高度経済成長期を迎え様々な分野に欧米化の波がおよび、伝統美術と画壇を取り巻く環境も激動する時代となりながらも、山本知克は1961年に日展会員に、1978年に日展評議員となり、日本画壇の振興に尽くします。
京展の審査員も受任し、1979年から1992年まで金沢美術工芸大学でも教授として教鞭をとり、同年に数々の功績を称えられ京都府文化功労章を受章します。
2003年に亡くなるまで意欲的に制作を続けられ、後進の指導に努められました。
山本知克の作品は、習熟した日本画の個展技法に裏付けられながらも、日本画と西洋画の境界を越えて絵画を探求した、独自の表現が特徴となっています。
西洋風景画風の構図で日本の山野を描いた風景画や、俯瞰の視点で国内外の西洋建築の風景画を描くなど、日展という伝統的な美術界に居ながらも現代日本画を追求したと言えるでしょう。
俯瞰の広域な風景画は日本画の伝統でもあると同時に、山本知克はそこに西洋の遠近法を取り入れ、建築を理知的に描き、独自の画面に切り取った作品を晩年まで制作し続けました。
色彩の妙も日本画家ならではのもので、全体を抑えた色調の作品や、光源と陰影を効果的に配したもの、主役となる建築物を引き立たせたものなど変化に富んでいます。
写真のお買取りしたお品物も、一見日本画であることを忘れてしまうような西洋風の風景画となっています。
しかし近接してみると日本画の繊細な塗りで表されていることが判り、熟練の日本画家の技が活きています。
山本知克の風景画は、街並みの風景のほか山野と冬山が多く見られ、人気のモチーフとなっています。シンプルな構成に、空の明るさと木々の緑の様々な表情、湖や川の水面の調和が清々しい画面が特徴です。
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