17世紀のバロック期に活躍したイタリアの画家で、イタリア美術における初期バロック様式を確立した画家の一人です。
イタリア北部のボローニャを中心に活躍しており、ボローニャ派の代表的画家としても知られています。
日本語ではファーストネームを「アンニバーレ」「アニーバレ」、姓を「カッラッチ」「カルラッチ」と表記する事もあります。
兄のアゴスティーノ、従兄のルドヴィーコも画家で、西洋美術史では彼らを総称して「カラッチ一族」と呼ぶ事が多く、アンニーバレはその中でも実力が最も優れていると評価されています。
アンニーバレはバルトロメオ・パッサロッティのもとで絵画を学び、初期の頃の作品は師の影響を受けた風俗画を手掛けていましたが、キリスト教や古代神話に題材にした歴史画に本領を発揮しており、ローマに出た際は名門ファルネーゼ家の枢機卿オドアルド・ファルネーゼの庇護を受け、ファルネーゼ宮殿の天井装飾を手がけ、アンニーバレの代表作となります。
この作品はアンニーバレの弟子を総動員して制作された力作でしたが、この大仕事に対する報酬が予想よりも少なかった事でアンニーバレはショックを受け塞ぎがちになり、その後の制作活動をほとんど行わなかったそうです。
そんなアンニーバレの作風は自然的でありながらも大胆な構図と躍動感に富んだ人体表現と、イタリア北部の伝統とルネサンス全盛期の作品にみられる余白の整理と理想化された人物像の描写を融合させたもので、17世紀の古典主義の流れを大きく変えるものでもありました。
また、カラッチ一族によって設立された画学校で古典的様式と革新的様式の教育を行い、グイド・レーニやドメニキーノなどバロック古典主義における重要な画家たちを育て上げています。