福岡県出身の昭和~平成時代に活躍した日本の洋画家です。
高い描写力と色彩美で圧倒する存在感を持つ静物画を手掛けている事で知られています。
その作品は中央にモチーフを配し、単色の背景というシンプルな画面構成で、抽象的な感覚を持ち合わせながらも古典的な技法が見られます。
父親は久留米青果市場の場長で武士の家系に育ち厳しくしつけられた事から藤田吉香も厳しく育てられました。
久留米在住の画家・松田諦昌(松田実)が主宰する松田塾で洋画を学んだ経験があり、松田諦昌は写実性を重んじた再現描写の指導に重点を置く画家であったため、松田諦昌の影響を強く受けた作風を展開するようになります。
東京藝術大学を卒業すると国画会会員として次々に作品を発表していましたが、スペインへ留学し、王立サン・フェルナンド美術アカデミーで学ぶかたわら、プラド美術館に所蔵されているヒエロニムス・ボッシュの「七つの大罪」「快楽の園」などの模写に専念し、西洋絵画の古典技法を研究しました。
帰国すると習得した技術をいかして身近なモチーフを克明に描写した人物や静物と平板な色面による背景を組み合わせた独自の画風を確立し、人気作家として朝日ジャーナルの表紙などにも載せられるようになりました。
さらにこの画風は進化を続け、3度目の渡欧後から背景に金銀箔を用いて背景の奥行き・空間を否定した画面を多く制作するようになります。
画家として精力的に活動を続けていた藤田吉香ですが、女子美術短期大学で講師、東京藝術大学で非常勤講師をつとめ、京都造形芸術大学教授、名誉教授として後進の指導にあたっており、日本の美術界に大きな影響を与え、画家として爪痕をしっかりと残しました。