ハンス・ベルメールはドイツ出身の人形作家、写真家です。
制作される写真や人形からはグロテスクで不気味な雰囲気が感じられることで知られています。
ハンス・ベルメールはドイツの南西のシュレジエン地方にあるカトヴィツェで生まれました。
父親は熱烈なナチス支持者で優秀なエンジニアで家庭では厳格、冷淡であり独裁的な権力を振舞っていたようです。
ハンス・ベルメールは青年の頃、父親に対して反抗的な態度だった為、矯正目的で炭鉱や鉄工所にて労働を強いられています。
反対に母親の方は優しく、可愛らしい容姿でハンス・ベルメールが幼少の頃は一緒に玩具を収集して遊んでおり、この両極端な性格の両親の家庭環境からハンス・ベルメール独自の感性が育ちました。
ハンス・ベルメールは父親の勧めでベルリン工科大学に入学しますが、20世紀を代表する風刺画家といわれているジョージ・グロスなどに影響を受け退学し、小説の表紙や挿絵を手掛けるようになった後にデザイン事務所を開設しました。
後に人形制作をスタートしますがきっかけはナチスの政権掌握でファシズムに抗議の意を込めた社会貢献の一つとして労働を放棄した事だといわれ、この時完成した奇妙な形をした人形は過度な健康志向を揶揄していたそうです。
その後ハンス・ベルメールの人形は日本の雑誌に紹介され、日本のドール業界に大きな影響を与えたといわれる球体関節人形を制作しました。
ハンス・ベルメールの人形や写真の特徴としては少女をグロテスクな雰囲気で不気味なポーズをしているところです。
また従来の球体関節のように関節の代替え品ではなく、モチーフの肉体を分節可能なオブジェにするための装置として人形の節々に球体を入れ込みました。
ハンス・ベルメールは人形、写真、絵画など独自の感性を存分に生かした作品を制作してきましたが、がんと闘病の末に惜しまれつつも72歳の時にこの世を去りました。