北海道出身の昭和~平成時代に活躍する日本の洋画家です。
聖書やギリシャ神話などに影響され、これらは多くの作品に反映されており、その作風は人間の心の闇を表し、その闇の底から這い上がる人間の強さや、慈悲の心を感じさせてくれるものとなっているのが特徴です。
作風やその生涯から孤高の画家、魂の画家、画界のドストエフスキーなどと呼ばれており、まさに絵を描くだけに生きている画家といっても過言ではありません。
冬の寒さが厳しい北海道で3人兄弟の末っ子として生まれた澤田文一は、生まれた時には父親が病気で亡くなっており、母親が女手一つで育てられました。
そのため、決して楽な生活を送れたわけではなく、厳しい寒さと貧しさに耐える生活を送っていました。
そんな生活を送っていたため、救いの手を求めるかのように聖書やギリシャ神話に惹かれ、心の中から吐き出すかのように絵に表現していくようになり、画家として作品を発表するようになりました。
「天才」と呼ばれる事の多い澤田文一の作品はまずはカンヴァスを黒く塗りつぶす事から始まります。
黒く塗りつぶしたカンヴァスに色や光を与え、時には穴を開けるなど他の画家が表現しない方法で絵を描いていきます。
これは幼い頃に辛く苦しい事を経験した事で生まれた心の闇そのものを心象風景として表わすために生まれた表現方法でした。
そのため自画像も多く描かれており、その時の心境によって表現の仕方が違っており、澤田文一の心の状態が分かるといわれています。
1980年代には有名百貨店での個展を数多く開催し、一世を風靡した澤田文一ですが、絵を描く事以外には執着がなく、突然消息不明となってしまいました。
多くの人々が澤田文一の存在を忘れかけた頃、再び日本の美術界に表れ、強烈な作品を発表し続けるようになります。
その人気は忘れられていた事が嘘のようで、今では根強いファンも多く、作品を入手する事が難しい作家の一人となりました。
売れっ子作家となっても家賃を除いては月の生活費は3万円という決して贅沢をしないという生活スタイルは変える事はなく、作品によってはカンヴァスの裏側にも絵が描かれている事があります。