今回、いわの美術がお買取したお品物は、徳川家康大黒頭巾鎧写で鹿児島県にある鎧甲冑工房丸武産業の光忍の職人たちによって制作された稚児鎧です。
徳川家康の枕元に立った大黒天を家康自らがデザインし、甲冑師に制作させたと言われ、関ヶ原の戦いや大坂の陣などで勝利した時に着用していた甲冑で、家康が最もゲンを担いで愛用していた甲冑を写したものです。
これはただ写したのではなく、本歌(本物)の2/3のスケールで制作されており、実際に3~8歳までの子供が着用する事ができるようになっています。
そのため、新品で購入するといつでも着用できるように、白小袖・袴・足袋・ワラジが同梱されていますが、今回のお買取では袴のみが残っておりました。
また、丸武産業 光忍の稚児鎧は完全受注生産で、追加料金を払えば子供の名前などを入れてくれるようで、お買取したお品物にも端午の節句祝いで贈った事が記されていました。
丸武産業 光忍は映画やテレビドラマで使用する甲冑や美術品・工芸品としての甲冑制作、古甲冑の修理など甲冑に携わるほとんどの業務を行っており、映画の衣装としての甲冑制作では黒沢明監督の『乱』『影武者』などが代表作として挙げる事ができます。
また、日本の新作甲冑の90%以上のシェアを占めており、光忍作の甲冑は鉄板一枚一枚を金切り鋏で切る所からはじまり、大量生産のように機械でプレスする事はせず、全てが職人の手作業によって生み出されているため、1つの甲冑を完成させるのにかなりの時間を必要としています。
丸武産業 光忍はこれまでに織田信長、武田信玄、毛利元就、石田光成などの甲冑や当世具足を手掛けてきましたが、設計図などは存在せず、その全てが職人の頭の中に甲冑の仕様が記憶されているそうです。