こちらの美しいマーブル模様のような作品は、陶器でつくられた陶筥です。作者は、練上手(ねりあげで)で人間国宝に認定された昭和の陶芸家松井康成(物故)です。
今回お買取した松井康成の晴白練上陶筥という作品は、松井康成の練上手の技術の粋を尽くし、陶筥の内部に至るまで美しい逸品です。様々な色の土を組み合せた模様のためみえにくいですが、松井康成の陶印である「康」の文字が刻まれています。
松井康成は、色の異なる土を組み合わせて成型し、同時に模様を作り上げる「練上手」の技法により、初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)となりました。
長野県生まれの松井康成は、大学卒業後25歳で結婚し、寺の住職就任後、その境内に安政年間につくられた窯があることがわかり、33歳の時に登窯を復元、作陶を始めます。
中国、朝鮮、日本の古陶磁を研究し、日本工芸会の田村耕一に師事、「練上手」の技法一本に絞った作陶活動を展開させていきました。
練上手は、色や濃淡の異なる土を組み合わせていくことによって様々な文様を表す技法ですが、性質の異なる2種類以上の陶土を使用するため、土の収縮率の違いなどから乾燥や焼成の段階で割れることなどもあり、大変高度な技術を要する技術です。
松井康成は、色土の収縮率を同じにするための研究を重ね、独自の表現世界を創造しました。
種類の異なる土の組み合わせは破損しやすいため、基本となる土を同じものとし、そこに鮮やかに発色する呈色剤を混ぜる「同根異色」という方法によって、松井康成独自の発色を有する練上の表現を用いた多くの作品を残しました。 その技法を応用した独自の手法を駆使して、新たな視点で現代的な作品を次々に創作し、松井康成は陶芸界に新生面を切り拓きました。
松井康成の作品は、初期の線模様に代表される練上作品に始まり、轆轤で内側から膨らませ表面に亀裂を誘う「嘯裂」、磁器に近い土の組成と硬質な輝きを特徴とする晩年の「玻璃光」に至るまで、多彩な作品を展開しました。
現在でもプロの陶芸家が松井康成の練上手の技法を研究するなど、その壮大な芸術性と技術の高さは非常に高いものとなっており、いわの美術でも買取を強化しております。 松井康成の作品買取でしたら、高価買取も行っているいわの美術にお任せください。