今回、いわの美術がお買取したお品物は夏目漱石の掛軸「墨竹画賛」です。
画賛とは絵の上部や余白に文章や句を書き加えられているものの事を言い、今回お買取した夏目漱石の作品も墨で描かれた一本の竹の上に「竹一本 葉四五枚に 冬近し」と夏目漱石の代表的な句が書かれていました。
長年、飾らずに丸めてあったようで掛軸の一部にシワ、シミができていた事がとても残念でした。
掛軸は収納する時に強く巻いてしまうとシワができてしまう事があるため、適度な力で巻く事が良いとされています。
掛軸の買取ではシミ、シワは査定額の減額に繋がりますので、高価買取を狙うなら大切に扱う事も必要です。
さて、夏目漱石は日本を代表する小説家として広く知られていますが、俳句をやるようになったのは大学時代に正岡子規と出会った事がきっかけでした。
「漱石」という号を用いるようになったのも正岡子規と出会ってからで、唐代の『晋書』にある故事「漱石枕流(石に漱ぎ流れに枕す)」という言葉が由来とされています。
実はこの「漱石」という号は正岡子規の数ある号の中のひとつで、夏目漱石は正岡子規からこの号を譲り受け、使用していたようです。
その後、イギリスへ留学して英文学を学んだ夏目漱石は、帰国してから『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『倫敦塔』を東京帝国大学講師としてつとめながら書き上げ、朝日新聞社に入社してからも『虞美人草』『三四郎』など次々と執筆していきました。
しかし、胃を患い「死」を身近に感じた夏目漱石の作品にはその影響が見られるようになり、胃の病気をかかえながら執筆活動を行っていましたが、『明暗』執筆途中でこの世を去ってしまいました。