今回お買取したお品物は、高島北海(たかしまほっかい)の山水図で朝鮮の金剛山を書いた掛軸です。
高島北海は、明治から昭和にかけて活躍した日本画家として知られていますが、日本で最初の地質図を作成したことでも知られており、画家として本格的に活動する前は、明治政府の技術官吏(ぎじゅつかんり)として様々な分野で活躍していました。
そんな高島北海は、山口県萩市で萩藩医の子として生まれており、幼い頃から絵を描くことが好きだったそうです。
明治維新後の23歳の頃に明治新政府の工部省に入省すると、兵庫県の生野鉱山に赴任し、およそ4年間フランス人技師より、フランス語、地質学、植物学などを学んでおり、これまでとは違う目線で日本の自然を検証することで、「山口県地質分色図」という日本初の地質図を作成しました。
その後も内務省や農商務省の技術官吏として活動を続け、高低差による植物分布分けの考えを導入するなど、先駆者的な活躍をしています。
高島北海は、36歳の頃にフランス留学という転機が訪れており、留学先で植物学を学んでいる際に日本画の教養もあったことから、自然観や日本画独自の遠近表現など日本画の技法を披露したとされており、その時に拝見していたエミール・ガレなどのアールヌーボーを代表する芸術家や文化人の度肝を抜いたそうで、後の新しい芸術を求めるアールヌーボー運動に大きな影響を与えました。
帰国後も行政に携わりつつ、地質学、植物学などの科学的知見を取り入れた画法を確立し、50代の頃には中央画壇の重鎮として活躍しており、晩年に入ると関東大震災を機に山口県に戻り、自身で名付けた長門峡など山口県の景勝地の開発や紹介に尽力しています。
そんな高島北海の掛軸の買取となったわけですが、全体的にシミが目立ったのは、残念でしたが、高島北海自身が朝鮮の金剛山を描いた肉筆ということ、象牙軸で共箱もあり、二重箱という事が高く評価できる素敵なお品物ということで高価買取となりました。