このお品物は京都府のお客様よりお買取させていただきました。 タイトルからわかる通り、東京都港区の増上寺を描いた物である。 その増上寺の戦後に焼けずにのこった三門(三解脱門)をあるアングルから描いたもの、 現在同一のアングルからではビルが三門の後方そびえて見えるので、 今となっては同じ景色を見る事はできない。 巴水に多い構図の雪景に寺という構成がとられているが、 それでも巴水の作品には同じ空の色は無い。 巴水の風景を読み取る観察力、それを表現する技巧により、 この作品の観察者は巴水が見た空の色、 三門の色合い、空気の匂いまで感じられる。 戦後に作品を残す事の少なかった巴水には珍しい1958年の作品。 文化庁文化財保護委員会は木版画技術保存の為に、 伊藤深水と川瀬巴水に依頼し、製作記録の作成と保存を行った。 伊藤深水は『髪』を製作し、 川瀬巴水はこの『増上寺之雪』を製作した。 巴水が戦後の東京を描いた珍しい作品として評価が高い。
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