今回買取したお品物は荒井寛方の掛軸で美人画です。
荒井寛方は栃木県を代表する日本画家です。
画家である父を持つ寛方は幼少の頃から絵を描くのが上手だったといわれており、21歳の頃に絵の勉強をするために家族と共に東京に引越し、浮世絵師の水野年方の元で絵を学びました。
寛方は、院展や文展に積極的に出品して何度も入選しています。
後にアジア人初のノーベル賞を受賞したインド人思想家のタゴールの誘いを受け、日本画の教授としてインドに渡り、仏教遺跡などを模写し帰国します。
帰国後も台湾に渡り大正天皇銀婚式奉加の作品作成するなど積極的に活動しました。
また、1940年に文部省より法隆寺金堂壁画の模写事業の主任画家に選ばれましたが完成を見ることはありませんでした。
寛方は「仏画の寛方」と知られていますがインド美術の影響を受けた美人画や武者画、自由なポーズの仏画などがあり、これらは優品が多いといわれています。
今回、お買取りした美人画は美人画にしては珍しい構図で、
描かれている女性の姿が半分見切れており、帯にはハッキリとした模様が描かれているのに対し、着物は無地で色彩を多用しないものでした。
奥ゆかしさを感じ、しばらくじっと見ていると仏にさえ見えてくる素敵なお品物でした。
残念ながら、仕舞う時に軸をきつく巻きすぎたのか、所々にしわが出来ていました。
