こちらの掛軸は、以前お買取致しました田中頼璋の肉筆「蓬莱山水図」です。
お買取した掛軸の作者 田中頼璋は、明治の終わりから大正期にかけて中央画壇で活躍し、竹内栖鳳や横山大観らと肩を並べる日本画の大家の一人です。
田中頼璋は幼少時より画を好み、17歳の頃には森寛斎の薫陶を受け、旅絵師として活動を続けていました。その後、川端玉章に入門し、「賴章」の号で作品を発表し、帝展など様々な展覧会で優秀な成績を収め、画壇に確固たる地位を築いていきました。「賴璋」という画号は師の川端玉章没後に使われるようになったものです。
田中頼璋は、山水画を得意とし、特に瀧の落ちる様子を描いた瀑布図は他の追随を許さぬ名手と称えられています。
田中頼璋の瀑布図では、滝の飛沫の細かな描写が涼気を感じさせ、清々しい心象風景が独自の筆致で精密に投影された秀作揃いで、観る人を魅了して止みません。
今回お買取した田中頼璋の「蓬莱山水図」は、瀧が主ではありませんが、遠くに二つの雄大な瀧が険しい山肌から流れゆく様子が描かれています。お買取した田中頼璋の「蓬莱山水図」の蓬莱とは、無上にして最高の聖域とされる蓬莱山をさしています。山水図には蓬莱山はよくみられますが、蓬萊は、古代中国で東の海上にある仙人が住むといわれていた仙境の一つで、道教の流れを汲む神仙思想の中で説かれるものです。
お買取した田中頼璋の「蓬莱山水図」は、徹底した鍛練によって磨き上げられた画技に裏付けられた筆致と色彩を縦横に駆使した、田中頼璋の写実性の高さを感じさせる見事な作品でした。
保存の難しい掛軸ですが、買取査定の際は、経過年によるシミや汚れなどもない良い状態で、田中頼璋の箱書き及び落款付の共箱とあわせて、高価買取させていただきました。
田中頼璋は、一点からでも高価買取の期待できる作家の一人です。田中頼璋の掛軸作品などご売却予定でしたら、美術品・骨董品買取実績豊富ないわの美術にお任せください。