今回、いわの美術がお買取りしたお品物は中国の墨、上海墨廠出品です。
中国で製作された墨の事を唐墨といい、日本で製作された墨の事を和墨といいます。
日本の墨作りは中国から伝来されたいわれており、中国と日本では少し、墨の製作方法や配合する成分が違います。
墨は油を燃やして出ててくる煤を集めて練り固めて作るものなのですが、中国では叩いて墨を作るためとても硬く作られています。
また、動物の骨や脊髄からとれる膠を混ぜて固形の墨にするのですが、この膠の配分も中国と日本では違うので、中国の墨を日本で保管しておくと、風土の違いから割れてしまう事が多く、古い墨ほど割れる確率が高くなります。
今回、お買取りした唐墨は、上海墨廠の大好山水シリーズです。
大好山水シリーズは昨今でも中国から入ってくる墨の中で最もポピュラーな墨となっており、昔のものと比べると品質は悪くなっており、文化大革命後からは油煙101と表記されるようになりました。
これは文化大革命が勃発する前、上海の曹素功系列の墨店の高級油煙墨は、五石漆烟、超貢烟(超貢漆烟)、貢烟、頂烟と4等級に分かれていました。
しかし、封建時代を想起させるような字句を商品に表記させることはできなくなったため、101などの数字表記になったそうです。
お買取りした唐墨は数字表記がないため文化大革命前に製造されたものという事が判断できます。
また、文化大革命前の大好山水は桐油に生漆を混ぜたものを焼成した「漆烟」ですので、高価な墨という事になります。
未使用品で、1本も割れていなかったので高い評価でのお買取りとなりました。
また、製作されてすぐの墨には水分が多いため良い発色が得られないと書家、書道家の間では最低でも3年は寝かせてから使用するそうで、年代物の墨は高価買取が期待できます。
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