こちらは伊勢型紙道具彫で人間国宝となった、中村勇二郎の彫った伊勢型紙を使用して染められた反物です。
道具彫は掘りたい模様によって彫刻刀を使い分け、型紙を突いて彫り抜きます。刃先が模様状になっている彫刻刀が使われ、この道具彫では彫る前に模様にあった道具を手作りします。
道具の出来栄えは作品の出来にも大きく影響し、中村勇二郎は三千本を超える手作りの彫刻刀を自在に操り、多くの優れた型紙を掘り出しました。
他の染色技術と違い、型紙の場合は使用可能な限り使われるので、彫師が他界した後もその名を冠した素晴らしい作品が作られます。
生地には正絹の浜縮緬、鬼シボ縮緬が使われています。
細やかなシボのたった縮緬の生地は色に深みを持たせ、落ち着いた味わいや高級感のある着物に仕立て上がります。鬼シボというのは大粒のシボで、このシボが大きくなることによって、しわがよりにくく、しなやかな風合いに優れた物になります。