お写真の品物は、以前、いわの美術がお買取した椿貞雄の油彩画「牡丹花一輪」です。
椿貞雄は岸田劉生に傾倒し、大きな影響を受けた洋画家として知られており、暗い画面の作品が多く見られます。
鮮やかに描かれた作品は岸田劉生がこの世を去り、家族の温かさに触れるようになった晩年の作品から見られるようになりました。
そんな椿貞雄が画家として活躍するきっかけとなったのは、岸田劉生の個展を見た事で、岸田劉生への憧れからか、自分の作品を持って岸田劉生の自宅を直接訪ねるといったエピソードも残されており、この事がきっかけに巽画会という展覧会に出品し、最高賞を受賞して画家への道を歩み始めました。
岸田劉生と共に行動する事が多かった椿貞雄は、岸田劉生の影響を受けた作品を多く制作しており、写実を通して神秘的な「内なる美」の表現を目指していました。
また、戦後には千葉県美術会結成に尽力し、日本画制作も行っており、いくつかの日本画も残しています。
お買取した椿貞雄の作品「牡丹花一輪」は肉筆と呼ばれる作品で、肉筆の作品は状態にもよりますが高価買取が期待できます。
椿貞雄のようにすでにこの世を去っており、高い評価を受けている画家の肉筆の作品は中古市場でも高い人気を持っているため、いわの美術でも高価買取で対応しております。
また、椿貞雄の作品の特徴としては、制作年が作品のどこかに記載されている事です。
今回、お買取した作品も裏にタイトルと制作年、そしてモチーフの場所や制作場所などが記載されていました。
また、この作品はキャンバスではなく、水彩画を描く時に行う水張りの道具として使用する木製パネルのようなものに直接描かれた珍しい作品でした。
疎開先で加筆と書かれていたため、戦時中で絵を描く材料がなかなか手に入らなかった事が影響したのではないかと推測され、当時の時代背景を感じさせてくれるお品物でした。