今回、いわの美術がお買取したお品物は、昭和時代後期に活躍した新潟県出身の版画家・星襄一(ほしじょういち)の作品です。
星襄一は、星座、雪、樹などをモチーフにした木版画を制作する事で知られており、特に樹を題材にした作品は精細に表現している所が高く評価されています。
日本国内では国画会の会員として活躍を見せ、東京国際版画ビエンナーレ展、サンパウロ・ビエンナーレなどに出品を重ねています。
また、国際的な活躍も見られる事から、東京国立近代美術館、千葉県立美術館など日本国内のみならず、ニューヨーク近代美術館、ボストン美術館、シカゴ美術館などの海外の美術館にも作品が所蔵されています。
そんな星襄一ですが、版画家としては40歳を過ぎてから目立った活躍が見られるようになったという遅咲きの作家で、中学校を卒業してから台湾にある台南師範学校に入学し、台南で13年間も初等学校の教員をつとめていました。
戦後の1946年に台湾から引き揚げ、郷里に戻るとガリ版屋を始め、「北光社」という看板を掲げ商売を行っていました。
そんな中、山奥の青年団の機関誌などを引き受けているうちに自分でカットや挿し絵を入れるようになり、それが評判を呼び、少しずつ注文が増えていきました。
その一方で、孔版画の技術を習得し、1948年に日本版画協会の展示会で初入選を果たした事をきっかけに本格的に版画家を志すようになり、家業を辞め、武蔵野美術学校で油絵を勉強しました。
42歳で卒業した星襄一は、版画家として活躍するようになり、木版画を始めた頃は白と黒を基調とした抽象画ばかりを手掛けていました。
しかし、人に振り向いてもらえなければ意味がないと、人間への郷愁を感じさせる星や星座のモチーフ、さらには自分の気持ちを表現する事ができる樹のモチーフを手掛けるようになりました。
今でこそ国際的にも高い評価を受けている星襄一ですが、版画家として制作活動を始めた頃は厚い版木を買えず、3mmくらいの薄いシナベニアを使って作品を制作していたそうで、星襄一が生み出す精細な作品は、この時に培われた技術がもととなっていると言っても過言ではありません。
お買取した星襄一の作品は「梢」というタイトルが付けられた作品で、星襄一作品を代表する樹シリーズの一つです。
この「梢」という作品は、梢の後ろに(赤)(青)とタイトルが付けられた作品も存在し、色の違いによって自分自身の気持ちを表し、全く違った表情を見せています。
作品はサイズが大きいものでしたので、出張買取で対応させて頂きました。
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