今回、いわの美術がお買取したお品物は、室井東志生(むろいとしお)の日本画「双鶴」です。
鶴は縁起の良いモチーフとして日本画でもよく使われるモチーフで、今回お買取した室井東志生の作品も長い間飾られていたようで、作品自体に色焼けなどは見られませんでしたが、額装の裏の部分にはしっかりとその年月を感じる色褪せがありました。
額装の傷み具合などはさほど買取額に影響はしないため、今回は室井東志生の肉筆の作品という事、額装の裏に共シールが付いていた事がプラスの評価となり、高価買取で対応致しました。
さて、この作品を手掛けた室井東志生とはどういった日本画家だったのでしょうか?
少しお話しますと、中学時代より日本画に憧れを抱き、高校を卒業してから上京し、東京都内の美術学校に通っていましたが体調を壊して帰郷し、中学校の教師をつとめるかたわら、県総合美術展覧会に出品していました。
そんな中、審査員の大山忠作と交流を深めるようになると再び上京し、大山忠作の紹介で橋本明治に師事します。
橋本明治は舞妓を主なモチーフとしており、多数の作品を残している事で知られていますが、その影響を受け、室井東志生も美人画や肖像画を得意としています。
また、法隆寺金堂壁画の模写事業に参加するなど、古美術の研究にも励んでおり、確かな表現力を身に付け、気品のある中に隠れた妖しさで、舞妓や五代目・坂東玉三郎、五代目・柳家小ら著名人をモデルとした作品を多く発表しました。