今回、いわの美術がお買取したお品物は、洋画家・野口弥太郎の油彩画「港」です。
野口弥太郎はフォービズム的体質と洗練された色彩感覚で、スペイン系絵画に見られる骨太い筆触による大胆な空間構成が特徴の作風を展開しており、ディエゴ・ベラスケスやフランシスコ・デ・ゴヤの作品の影響を受け、ヨーロッパの美を描き出すために黒色の美しい階調を駆使した作品が高く評価されています。
野口弥太郎は広大な土地を所有する資産家の家に生まれ、父親の仕事の関係で日本各地を転々とする幼少時代を過ごしました。
その中で画家を志すようになり、東京美術学校を受験しますが失敗し、以後独学で油彩画を描くようになりました。
代々木にアトリエを構え、画家として頭角を現すと二科展に出品するほどとなり、その後も、一九三〇年協会会員として活躍するなど、日本画壇を牽引する存在として注目を浴び続けました。
一九三〇年協会を引き継ぐような形で結成された独立美術協会では児島善三郎、林武とともに「独立三羽烏」と称されるなど中心作家として活躍を見せ、晩年によく訪れていた長崎の風景画を多く手掛け、長崎在住の画家たちと積極的に交流したそうです。
さて、今回お買取した野口弥太郎の作品は梅田画廊で扱われたもののようで、額縁の裏に作家名、作品名、画廊名が書かれた共シールが貼られていました。
共シールの有無は買取額にも影響を与える場合が多く、今回もプラスの評価が付きました。
保管場所が悪かったのか一部に油絵具のひび割れがあり、マイナス評価もありましたが野口弥太郎の作品という事で高価買取となりました。