今回、お譲りいただきました写真の作品は、吹田文明作『虹立つ B』木版画です。
木版画の彩色は基本的なイメージとして、墨色や単色などのシンプルなものが多めですが、
吹田文明の作品は、その先入観を覆しダイナミックな色彩に合わせて透明感のある部分と、
重厚感のある部分、この2つの対比表現をすることよってより鮮やかな世界観が表現されて
います。
吹田文明（ふきた ふみあき)
徳島県阿南市出身。
1947年(昭和22年)に、徳島師範学校(現在の徳島大学)を卒業後、小学校教諭としてスタート
します。当初は油彩で抽象画等を描いていましたが、小学校での図工の授業をきっかけに版画
を手掛けるようになり、翌年の1948年、徳島県教育委員会の長期研究生として東京芸術大学
に派遣され、画家の萬鉄五郎に師事します。
以後、紙版を用いたり木版用プレスを考案するなど様々な工夫を重ね、水性絵の具と油性絵の具
を塗り重ねて空間を表現する画法を確立しました。
その後、海外で数々の賞を受賞し、戦後の先駆的な版画教育を切り拓くその一方で木版作家と
して国内外で評価を着実に高めていくことになります。
1969年(昭和44年)に、多摩美術大学教授に就任。多摩美術大学に日本で初めての版画科を新設
し教鞭をとります。のちに初代科長に就任。
1989年(平成元年)に紫綬褒章受章。
1994年(平成6年)に日本版画協会理事長就任。
1998年(平成10年)に勲四等旭日小綬章。
2004年(平成16年)に日本美術家連盟理事長就任。
93歳を超えた現在も精力的に制作を行い、日本版画協会展などに作品の出品をしています。
次の目標は99歳で『白寿展』を開催することだそうです。作品を通して私たちは更に木版画の
魅力に触れることになるでしょう。
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