今回買取したお品物は、尾身周三の油彩画で秋の奥会津です。
尾身周三は日本全国の古い民家を中心に描いている東京都出身の風景画を得意とする画家で民家の尾身と知られています。
作品集の略歴には新潟出身とありますが古い民家を描く画家が東京都出身だとまずいかなと…考えての事だそうです。
作品の数は数万点にもおよぶそうで田舎の佇まいに魅せられて描き続けているそうで、最近は都営荒川線沿線の情景も描いているそうです。
尾身周三が民家を描くようになったのは20代後半でウクライナの夕べという作品に感動したのがきっかけのようです。
アユ釣りが趣味で山あいに出かけると同時に、かやぶき民家を探しているそうです。
夏に家をみつけ、秋にスケッチしに行くと解体されなくなっている事もしばしばあるようです。
民家の画家としては、困りますが時代の流れとはいえ寂しく感じるからか、尾身周三の作風としては日本の原風景を忘れてはいけないよと、やさしく思い出させるような写実的なタッチが感じられます。
また、今回買取した尾身周三の作品には描かれてはいませんでしたが畑を耕す農婦や家の前でなにか燃やしている農婦が登場します。
それは子供のころに畑でトマトを失敬したところ持ち主のおばあさんに見つかって「取るなら熟した実を自分で食べる分だけ持って行け」と言われ、その時のおばあさんと重なっているそうです。
今回買取したお品物は肉筆で観賞と作品保存のために仕立てられた額装に収まっていました。
この人柄だからこその作風なのだと人気もうなずける素敵なお品物でした。