今回、いわの美術がお買取りしたお品物は三岸節子の静物画です。
三岸節子は女性の洋画家で、戦前のモダニズムを代表する画家の1人・三岸好太郎の妻でもあった事は有名です。
当時の女性が画家として活躍するには厳しい時代でしたが、それを打破するために三岸節子は女流画家協会の創立に発起人として参加するなど、女性が活躍できる洋画界を築きあげようと尽力しました。
また、女性洋画家として初めて文化功労者としても知られています。
三岸節子は大地主で織物工場を経営している家庭に生まれましたが、裕福であった実家が第1次世界恐慌のあおりを受け、破産してしまいました。
名誉を挽回したいと強く思った三岸節子は、女性が名誉を挽回する方法として選んだのが画家でした。
しかし、19歳の時に三岸好太郎と結婚をし、すでにお腹の中には新しい命が宿っていました。
家庭と子育てを行う中、画家としての制作活動も行っており、当時の作品は外に出る事が少なかったため、室内の作品が数点残されています。
その後、三岸好太郎との結婚生活は、同じ画家という立場からいがみ合いが多く、そこに拍車をかけるように三岸好太郎の女性関係に悩まされながらも彼の作品に魅了されていた事もあり、三岸好太郎が亡くなるまで苦しい生活を続けていました。
洋画家・菅野圭介と出会うと激しい恋におち、別居という形の結婚をしましたが、家庭を大切にして欲しかった菅野圭介と意見が相違し、離婚となってしまいます。
また、この頃の三岸節子の作風は今までとは大きく変わり、外界と遮断したかのような無機質な作品が多く見られます。
お買取りしたお品物は、この頃よりちょっと後に描かれた作品の作風に近く、キャンバスの裏には荒々しい文字で「三岸節子」「静物」とだけ書かれていました。
作品の状態は極めて良好で、外箱や鑑定書などはありませんでしたが、貴重な三岸節子の作品ですので、高価買取とさせて頂きました。