今回、いわの美術がお買取したお品物は桜井陽司のデッサンです。
スケッチ画に水彩絵の具で着色された作品で画面向かって左側に描かれた蛾が印象的な作品で、壁に止まっている姿を描き写したのでしょうか。背景の灰色が絵の存在感を引き立てています。
桜井陽司は新潟県で生まれた画家で、上京してから油彩画を始めました。
都交通局(当時電気局)に就職し、4年間勤めますがその間に職場美術協議会結成しています。
また、戦火に遭い今までに描いた作品を消失しているため、肉筆の作品は高値で取引されています。
その後、厳しい戦火を潜り抜けたせいか精神病という診断を受け、不当な治療を受けるなど多くの苦難を経験しました。
そのため、作品には自らの精神世界を反映したものが多く、強い精神性を感じます。
その証拠にお買取りした作品の裏には「蝶」と書かれている上から「が」という言葉を被せています。
桜井陽司は孤高の画家と呼ばれていますが、芸術家や画家と呼ばれる事を嫌っており、生涯その作風を変える事なく描き続けていました。
一見無造作に見える荒々しいタッチには線1本1本に魂が込められているかのような印象を持っています。
桜井陽司の作品はどこか人も魅了する力を持っており、中古市場でも人気のある作家です。
お買取した作品は額に傷はありましたが、作品自体にはシミや汚れなどはなく良い状態でお譲り頂きました。