こちらの写真は、先日お買取させていただきました藤田嗣治のリトグラフ「果物と少女」です。
藤田嗣治(レオナール・フジタ)は、モディリアーニ、シャガールなどと並んでエコール・ド・パリを代表する作家の一人で、フランスで最も有名な日本人画家として知られています。
日本にいた頃の藤田嗣治は、文展に出品しても落選ばかりしていましたが、渡仏して、最新の芸術に触れることにより、才能が開花し、パリ画壇に一大センセーショナルを巻き起こしました。藤田嗣治の圧倒的なセンスと技術は、あの天才ピカソにまでも認められた才器を持つ人物として知られます。
今回買取した藤田嗣治のリトグラフ「果物と少女」のオリジナルは、藤田嗣治77歳の1963年の作品です。
藤田嗣治は1963年~1964年にかけて、果物を主題とし、その背景に空を描いた静物画を幾度となく制作したといいます。また、1953年頃からは、子供の絵もたくさん描いていました。
お買取の藤田嗣治の作品には、りんごを抱え、両足を広げて床に座り込んだ、少しこまっしゃくれた表情の少女が中央に描かれています。
藤田嗣治は子供好きでも知られますが、5人の女性を妻として迎えながらも、自分の子供をもうけることのなかった藤田嗣治は、この女の子を永遠の少女として描いたのかもしれません。
そして、少女の周りには、葡萄や洋梨、西瓜など様々な色とりどりの果物が描かれ、市松模様の床も、印象的な構図です。
買取の藤田嗣治の作品は、最晩年に製作されたものですが、全く年齢を感じさせず、穏やかな空気感や果実の透明感あふれるみずみずしさなどが、藤田嗣治の卓越した描写力によって表現されています。
今回買取した藤田嗣治のリトグラフの余白には、H.Cの文字がみられますが、これはhors commerceの略で、非売品の意味します。
H.Cは、版画の販売用の見本として作られたもので通常は、限定数の3~10%くらい作られ、通常限定のリトグラフ作品も、H.Cの作品も、全く同じ刷りで、版画の価値は同じとされています。
今回は限定部数150のうちの一つということで、保存状態もよく、高価買取にてお譲りいただきました。