今回、いわの美術がお買取したお品物は、16代永樂善五郎の安南馬蜻蛉茶碗です。
永楽善五郎といえば、千家の正統的な茶道具の制作を行う千家十職の一つとして知られている土風炉、焼物師で、初代西村善五郎から代々受け継がれてきた名称です。
永楽善五郎は1871年に現在の永樂姓(10代~当代)に改姓しており、その前までは西村姓(初代~9代)を名乗っていました。
永樂姓を名乗るようになったのは9代からとなっていますが、実際に永樂姓を名乗るようになったのは12代の時で、11代の時に紀州藩10代藩主徳川治寶の別邸西浜御殿の御庭焼開窯に招かれ、作品を賞して「河濱支流(かひんしりゅう)」の金印、「永樂」の銀印を拝領したことにより、その銀印を印章として用いるようになった11代から永樂の名で呼ばれるようになったのです。
今回お買取りした作品は16代の作品で、本名を茂一といい、15代の長男として生まれました。
京都市立美術工芸学校に入学しましたが、父親が亡くなった事をきっかけに退学し、その5年後に16代永樂善五郎を襲名しています。
源氏物語五四帖に因んだ連作を発表した事はとても有名で、この作品は壮年期を代表作として広く知られています。
表千家13代即中斎宗匠より「陶然軒」の席号を授かり、千家十職による千松会等を開催し、茶陶界において精力的に活動を行い、様々な作品を展開してきました。
作品には染付、色絵、金襴手、交趾、祥瑞等、華麗で伝統的な茶陶を中心としており、今回お買取りした茶碗も、安南馬蜻蛉茶碗というトンボが描かれた夏に使用できる安南染付の茶碗でした。
共箱付で、16代永樂善五郎の作品という事で、高い評価での買取となりました。
ちなみに家督を譲ったあとは「即全」と号し、作陶を続けました。