今回、お譲りいただきました写真の作品は、若尾経 作 『米色瓷酒盃』です。
青瓷釉の中に含まれる鉄分が還元焼成で青く発色するのが『青瓷』で、同じ釉薬でも "酸化焼成"
すると、黄色から『米色瓷』に発色します。良質の米色瓷はなかなか作れないそうです。
≪作家紹介≫
若尾経は、1967年に若尾利貞氏の長男として、岐阜県多治見に生まれます。
1993年、日本大学芸術学部写真学科を卒業後、1995年に多治見陶磁器意匠研究所を修了し、
2010年には、第5回パラミタ陶芸大賞展で大賞を受賞しました。
作品を作るにあたってあえて厳密なデータは取らず、素材に触れたり様子を見ながら調整していく
形をとっており、その理由として磁土は同じ場所で採ったものが必ず同じ性質とは限らず、また
天候は毎日変わるため、全くの同じ条件で作品を生み出せるということはないから…だそうで、
自然との対話で作品を作るとコメントを残しています。
それゆえに失敗から生まれ、思いもしなかった色を出せた釉薬もあるそうで、例えば今回紹介を
している作品『米色瓷』を作ろうとしても、たった1つの成分を、5%配合を間違えたことにより『象牙瓷』になってしまったこともあるとか…。
ただ悲観的にはならず、結果目指していた作品とは違うものが、現在のご自身の作品の根幹を成
すものになってくれたと、その "偶然性" すら楽しんで作陶されているように感じます。
透明感のある美しい光と色彩を放つ青瓷(青瓷は上段にも記載した、象牙瓷・米色瓷・玉白瓷)を
はじめ、他にも柿釉や天目などの鉄釉作品等があり、釉薬やその貫入が繰り広げる表情豊かな色
彩が細部にわたって緻密でありつつ大らかな輪郭の造形美となって秀逸な作品が1つ1つ生み出
されているのです。
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